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 竹崎正則(4番)は、あわてて逃げる種村 宏(7番)を必死に追いかけていた。
 全て、謎の襲撃者のせいだ。

 正門の前の茂みに隠れていて、筒山光次郎(18番)を待っていた。そして、光次郎が現れた直後。一発の銃 声……らしきものが聞こえて、光次郎が崩れ去った。途端、宏が走っていったのだった。

「宏! 止まれ! いい標的になるだけだ!」

怒鳴っても止まらずに、結局は50mばかり走ったところで追いついたのだが、既に完全にエリアG=3は抜け てしまっていた。もう分校に戻ることは不可能に等しい。

「……筒山が……!」

「わかった! わかったから……そこの家に入ろう……ここにいたら、みんなの標的になるだけだ……!」

無理矢理に宏を家に連れて行き、木造の家に入った。もちろん、鍵を掛けた。

「……筒山……どうして……!」

「……多分筒山は誰かに殺された。多分、堤がやったんだ」

 堤 洋平(17番)は出てくると同時に、先程まで自分たちがいた茂みに隠れたのだった。玄関が完璧に見渡 せる、あのアリーナに。もちろん2番違いの綱嶋裕太(19番)を待つことにしただけかもしれない。だが、正則に はそうは感じられなかった。
つまり、堤は銃か何かを支給されたのだ。そして、筒山を撃ったのだ。筒山が出てきて(そして死んでから)既に 2分はとっくに経過している。だが銃声が聞こえないのは、綱島裕太が上手く逃げ延びたか、あるいは襲撃者 (堤だろう)と一緒に合流したか。後者の場合なら、ほぼ確実に堤はゲームにのったことになる。なんてことだ!

「堤……かよ……!」

「ああ……間違いなくあいつだ。じゃなかったら、その前に出てきた奴も狙われてもおかしくない。多分、あいつ だ」

だが、こちらの支給武器は果物ナイフ防弾チョッキ。後者はある意味あたりの武器かもしれないが、体しか守 ってくれない。ナイフなんてものは銃の前では話にならないのだ。
別に自分達が復讐しようと考えても無謀さからやらないとは思っていたが、もう1つ不安なことがあった。

天道 剛(26番)のことだ。彼とは出席番号がそう近くない為に、とりあえず家に隠れることを苦労して(気付か れないようにやったつもりだ。なんせ向こうは新人だというし)伝えたのだが、具体的に何処にいるかを伝えられ なかった。

「剛は……ここに来るかな?」

「僕は……天道ならエリアG=3の家にはいかないと思う……だって、あそこは少し経ったら禁止エリア……と かいうのになって……手西……みたいになるんでしょ?」

 そこで再び、正則はあのグロテスクな死体を思い出してしまった。思えば、嘔吐したのは一体誰だったか。目 の前できっぱり言うところから、多分宏ではないだろう。案外、殺された富山か、はたまた筒山か。
とにかく、あまり(というよりむしろ絶対に)思い出したくないものだった。

「まぁ……そういうことだな」

言いつつ正則は地図を取り出した。前にも取り出して確認したのだが、この政府支給の地図は、民家の位置ま でもを正確に記述してある。民家は青い点で表示されていた。こうしてみてみると、どうやらG=4には11件も の家がある。

「でも……必ずしも天道がG=4に位置する家にくるとは限らないぜ」

問題はそこだった。同じくG=3に隣接するG=2、H=3にも家は点在していた。

「大丈夫……だと思うよ。ほら、この2ヶ所はどっちもエリアG=3からは家が遠い。だけど、この家は……1番近 いし……それに誰だって人間の心理的には会場の中央に行きたいものなんだよ。だから……」

「だから、この木造の家に来るっていいたいのか?」

「うん………」

確か宏は心理学が好きなようだった気がする。保健体育の成績がいいのは体育が好きだからとばかり思って いた
のだが、どうやらそうではないらしい。

「まぁ、あとは天道に任せよう。運頼みってとこだな」

もう、仲間になってくれるかどうかはわからなかったが、最後の賭けに、出ようと思った。



【残り37人】




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