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 堤 洋平(17番)は、地図でいうD=4、山小屋らしき物の近くに潜んでいた。
洋平は支給武器のバルラPK85・リボルバーを握り締め、じっと獲物が来るのを待っていた。



 全ては5分前のこと。
共にクラスメイトを殺そうと悪友と組んだ。そのペアの綱嶋裕太(19番)が唐突に言ったのが始まりだった。

「見ろよ、誰かがくる」

裕太は大変目がいいことで知られていた(もっとも別の物の方が有名だったが)。視力は2.0以上、聴力にも 優れていていた。ようするに5感は優れていたのだが、どういうわけか本能的なカン、第6感が優れていないら しい。その分は常に洋平が補ってきたのだが、とにかく、裕太の言うことは絶対だった。

「誰だよ?」

「この山道を登ってきている。やっぱりここで待ち伏せして正解だったな」

裕太はそう言うと、少し息をついた。



 2人が分校の裏口から出た後、裕太はまっすぐに山道へ向った。
洋平はただ後をついていっただけだが何処を通っているのかはわからなかった。気がついたら今いる場所にい たのだが、どうやら裕太は地図を暗記してしまったらしい。流石だ。
実は裕太は頭が悪いわけではなかった。いや、世間一般から見れば、それは『馬鹿』なのだが、生きるための 術に関しては非常に優れていた。
学校の勉強なんて何に使えるか? おそらく必要なのは国語だけだろう?
だがこのゲームでは、いくら頭が良くたって駄目だ。いかに人を出し抜いて、そして生き残れるかだ。

「登ってきているのは、殿村だな。臆病者だけど、武器が銃だったりしたら危ない。お前に任せるよ」

 殿村竜二(36番)。富山欣治(38番)程ではないが臆病者で、負けそうになるといつもわざと負ける。そう、そ れは全滅寸前に全てを諦めるようなもの。
まぁ、ゲームならコンティニューできるからいい。だが、命は一度きりだ。

「お、俺が?」

「そうだ、2人でいると気付かれやすいから、俺は少し離れてみている。1人で、1発でしとめろ」


 そんな無茶な。


だが、裕太は軽く笑うと、洋平の肩に手を置いた。

「お前なら出来る。筒山の時も1発でしとめただろ?」

 思い出した。分校から出てきたばかりの筒山光次郎(18番)を、興奮しながら1発でしとめたこと(彼の支給武 器は金槌だった為、裕太は持っていかなかった)。

「俺の武器は地雷だ、お前の腕が頼りだからな」

「……わかった」

 そして、今、洋平は目の前を歩いている殿村にポイントをあわせて、じっくりと構えた。狙うは頭、予備マガジン は1個、弾は30発ほどしか入っていなかった為、無駄は出来ない。

「……っ!」

一瞬の乾いた爆発音の後、目の前を見てみると、殿村はこめかみに穴をあけて、既に他界していた。



 まただ。

 また、自分の心臓が高鳴っている。



洋平は気がついた。狙った場所に弾は見事に的中し、正確に射抜いている事を。だがそれだけであって、彼に 射撃の才能があったことは、まだ彼自身は気がついていない。
ふと脇を見ると、そこには裕太が呆然と立っていた。

「……裕太」

「……すげぇ。お前、すげぇよ……!」

人を殺しているのに誉められるとは、いやはや。まるで戦争だな。
気がつくと、裕太は殿村の死体の周りに穴を掘りはじめていた。

「ちょっと手伝えよ」

「あ、うん」

そうして中規模の穴が2つ出来ると、裕太はデイパックから金属を取り出して、2個ほど埋めた。その後丁寧に 土をかぶせると、もうここにはくるな、と言った。
その後再び茂みへ移動すると、洋平は疑問をぶつけた。

「裕太、これは……」

「支給された地雷さ。とりあえずこの死体の周りに2個、対人用だから踏むだけで即死さ。絶対に踏むなよ」

その言葉に少し震えが入っていることがわかったが、洋平はわかった、と小さく呟いた。

「でも、なんでこんなところに?」

「考えてみろよ、この山道は基本的には一本道だ。とすると、誰かが来る確率は非常に高い」

あ、と思った。

「そしたら勿論殿村の死体を見つける奴がいる。勿論死体に慣れているなら近づかないだろうが、まぁ初めて見 る奴は近寄って死んでいるのかどうか確かめるだろうな。すると」

裕太は右手の拳を広げた左手にぶつけた。

「ドカン、だ」

「お前も、十分すげぇよ」

洋平は苦笑すると、後ろを向いて殿村の死体を見た。


 ふと、おぞましい疑惑の念が体を駆け抜けたが、大丈夫だと、洋平は自分に言い聞かせた。



  36番 殿村 竜二  死亡



【残り22人】




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