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 突然、綱嶋が何かを投げてきた。
それはヒュッ! と風を切り、そして自分の頬を掠めて草むらに落ちた。

「はずしたか……やっぱ雨降ってるからな」

綱嶋がそう言った。



 なんだ、あれは?

 草むらを覗く時間など無い。そうこうしているうちに、きっと自分は殺される。



 殺サレル……?



「やい綱嶋! お前今何投げたんだ?!」

隣で大輔が怒鳴っている。
綱嶋は、顔に笑みを浮かべて、手のひらを返した。
その上に、刃物が転がっていた。

「クナイ……苦しみが無いと書いてクナイと読む。投げナイフの一種だ。まぁ、クナイの飛ばす版だから飛苦無 でも言った方がいいのかな?」


 トビクナイ?


それは堤が殺した殿村竜二(36番)の支給武器だった物だが、銃の弾を節約する為に綱嶋が持ってきた物で あった。勿論、言う必要も、知る必要も無いことだったが。

「見てもわかるように俺達はやる気だ。だから、せめて苦しまないように一発で仕留めてきたんだけど……どう やら今回は無理らしいね……!」



 ヒュッ!



再びクナイとやらを投げる音がする。



 ドッ!



というような、風呂場の床をかかとで踏むようなくもぐった音が聞こえた。同時に、傍らに立っていた大輔がゆっく りと倒れていくのが見えた。

「九十九? どうした……?」

そして見た。大輔の額に、その刃物が深々と刺さっているのを。
勿論、既に絶命していた。

「知ってるか? 額は人体急所の一つなんだよ。そこに強い刺激が与えられると、最悪の場合ショック死するこ とがある。まぁ、ナイフなんて生やしていて生きている方が不思議だよな」

淡々と説明する綱嶋に、照屋は凄まじい恐怖を感じた。

「じゃ、堤。あとは任せた」

「なんだ、また俺かよ」

綱嶋が堤の肩に手を置いて、言った。堤はそれに……笑って応じた、笑って。



 駄目だ……!

 逃げなきゃ!



 俺はまだ死にたくない……!!



後ろを振り向いて駆け出し、少し走ったところで乾いた銃声音を聞いた。
同時に頭を車で轢かれたような感覚に襲われ、次の瞬間には既に絶命していた。彼自身何が起きたのか、わ からないまま。



 堤洋平はバルラPK85・リボルバーを構えなおして、ズボンに差し込んだ。相変わらず凄い腕だった。


 そろそろ午後6時が近づいてきた。



  15番 九十九 大輔
  25番 照屋 宗治    死亡



【残り13人】





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