61

 銃声が響きあった頃、またここ……C=8付近でも戦闘が始まろうとしていた。
堤 洋平(17番)は、その手にバルラPK85・リボルバーを持ちながら、道端に隠れていた。

「来たぞ」

隣で綱嶋裕太(19番)がそっと囁く。
視力のいい彼は、遥か向こうの道から歩いてくる人影を発見していたのだ。

「どうする? 俺が銃をぶっ放してもいいけれど……もう残りの弾は大分少ないよ」

彼に支給された武器は当たりだったが、どういう因縁か弾の数が異常に少なかった。
従って、来るべき最終戦に備えて弾は温存しておかなければならない。だから必ず1発でしとめるように、と何 度も綱嶋から言われたものだった。

先程しとめた照屋宗治(25番)はどういうことか武器はおろかデイパックさえも持っていなかった。一方綱嶋が 飛苦無でしとめた九十九大輔(15番)も支給されていたのは何の変哲もないブッシュナイフだった為、銃は最 初に支給されたこれ1丁ときている。
その理由は今回は支給される武器の中で銃の数は全部でたったの9丁と少ないせいなのだが、それを知って いるのは政府の連中だけだった。

「それもそうだな……じゃぁ、またこれに頼るとするか」

綱嶋はそう言って、飛苦無を構えた。
自分に銃の才能があるように、こいつもダーツの才能でもあるのだろうか。

「でもさ……相手も銃を持っていたら、どうするんだ?」

「そりゃ倒したらこっちが得する。まぁ、俺がやられたらその銃ぶっ放してもいいぜ」

顔に笑みを浮かべながら相変わらず語る綱嶋を見て、洋平は殿村竜二(36番)を射殺した後に感じた違和感を 再び思い出した。


 こいつは、いつか俺を殺すんじゃないか?


今は同盟を組んでいるからこそ共に行動をしている。
だが、もしこのまま順調に生き残っていったとして、最後の2人になった時、こいつはどうするだろうか? もしか して、この自分を裏切って殺すんじゃないだろうか?
プログラムに例外はない。最後の1人になるまで、あるいは脱走(昔はそんなこともあったそうだ。だが、頭の悪 い自分にそのような芸当ができるとはどう考えても無理だ)するしか生き残る術はない。

 ……いや、そんな筈は無い。

綱嶋が、自分を裏切るはずが無い。ずっと、2人でいたじゃないか。最後は仲良く正々堂々と戦おうって気にな るはずだ。それなら、たとえそれで自分が死んだとしても悔いはない。最後まで、綱嶋は自分の相棒でいてくれ たのだから。

「じゃ、行ってくる。援護よろしく」

いつの間にか獲物――津崎 修(16番)は目の前まで来ていたようだ。
でも津崎はなんでここにいるんだ? いつもグループを作っているはずの竹崎正則(4番)の奴等はまだ生き残 っているはずだ。それともなんだ? 津崎も裏切って全員皆殺しにしてしまったのだろうか?


 どちらにしても危ない……!


本能的に、彼が今までのクラスメイトと違い、危険人物であるということがわかった。

「綱嶋! あいつはやる気だ!」

彼の投げた苦無は当たらなかった。
当たり前だ、津崎はあれでも抜群の反射神経を持っている。やっぱり、ここは自分が援護しないと……。

 そう思った瞬間だった。


 パァン!


突然津崎の手中から火花が出た。勿論それは銃弾が発砲されたのだが。
その銃声の後、綱嶋裕太は後ろに吹っ飛んだ。



 カシャン……



自分の中で、何かが割れるのを洋平は感じた。

「綱嶋ぁぁぁあああっっっ!!!」



【残り9人】





 Prev / Next / Top