６６
その乾いた銃声を聴いてから、門並増美（担任）は６番のマークがモニタから消滅するのを見て、感涙してい
た。
そして、慌ててハンカチで涙を拭いて、レポート用紙を書きはじめた。
実は生徒に取り付けている首輪には、盗聴機能が搭載されていた。
つまり、プログラムが始まってから生徒の会話は全て筒抜けになっていたのだ。要項によると、脱出や反乱を
試みる生徒が少なからずいる為、この機能を搭載させているのだという。
そして、残り人数が少ない今、ヘッドホンは開放され、部屋中に全生徒の会話が流れていた。
「門並センセ……わかりましたか？ プログラムというものがどんなものか……」
「はい……。よくわかりました……出来る事ならこの子達を殺したくはなかった……！」
「それなら、これからは出発前に生徒を殺さないほうがいいですよ。これは私個人の意見なので、別に気にしな
くても構いません」
「蒔田君……！」
何故、この国にはこのような法律があるのだろう？
国民の一致団結力を消失させる為？ その為に、殺し合いというものをさせているの？
「でも、先生……これは仕事です。割り切らなくてはいけません。たとえ先生が今考えている事が国家反逆罪
になるものだとしても、私は何も言いません。心の中に閉まって置いてください、そして……忘れないで下さい、
生徒のことを」
いつの間にか涙腺が緩み、涙があふれ出ていた。それでも必死にレポート用紙を書く姿は、仕事人だった。
『棚瀬…？！』
モニタールームに響いた声。画面を見ると、３１番のマークが赤い６番マークの近くに存在していた。銃声を聴い
て駆けつけてきたのだろう。つい先程まで彼と話していたのだ。
『さっきまで……生きていたのに……！』
悔しいのだろう。寺井晴行が、自分の大切な友が、再び殺人をしてしまったのだ。
再び涙がこぼれてきた。
『畜生……畜生……！』
画面上部の方を見た。Ａ＝９、集中したマークがある場所に向って、１７番と、２４番のマークが移動していた。
そろそろ最終戦が､始まりそうだった。
男子５番 立川 朋彦
支給武器：モデルガン
被害者 ：なし
加害者 ：寺井晴行（男子２４番）
死因 ：頭部被弾
補足 ：塚本の死を見届けた棚瀬の前に出現、合流する事にする。
寺井に襲われた際、囮になると言って、自分から寺井に殺された。
男子３７番 飛田 信行
支給武器：フライパン
被害者 ：堂本文男（男子２９番） 友永 武（男子３９番）
加害者 ：寺井晴行（男子２４番）
死因 ：全身被弾
補足 ：反政府組織の父を持つ。亡き父の復讐として、やる気になっている人物の殺害を
決意。分校前にて出発する生徒を狙っていた友永を殺害後、銃を奪って
逃走する。途中遭遇した土井とは合流を拒否し、Ｂ＝４の民家にて精神崩壊を
起こした堂本を射殺。その後棚瀬から寺井がやる気であると知り、彼を殺すべく
森の中へ入っていくが、激しい戦闘の上、最後には全身にマシンガンの弾を
浴び、死亡した。
男子１６番 津崎 修
支給武器：ベレッタＭ９２Ｆ
被害者 ：多重山俊也（男子２番） 長明晴喜（男子１１番） 塚本大作（男子１３番）
時津 優（男子３０番） 豊田敬一（男子４０番）
加害者 ：堤 洋平（男子１７番）
死因 ：肩部、頭部被弾
補足 ：誰も信じないと決め、仲のいい竹崎達との合流を拒絶する。潜んでいたＨ＝３の
民家の近くで多重山が尚本を殺害するシーンを見て怒り、多重山を射殺。自分に
向けていきなり発砲した長明も射殺し、次いで襲ってきた塚本も結局は殺害する
事に成功する。しばらくして、襲撃してきた豊田を殺害。そのシーンを見た時津
に撃たれるも、辛うじて殺害する事ができた。今度は綱嶋に襲われたが、
切り替えして致命傷を与えた。しかしペアを組んでいた堤には敵わず、
狙撃されてあえなく殺された。全て正当防衛上での殺害だったと言える。
男子１９番 綱嶋 裕太
支給武器：対人用地雷
被害者 ：九十九大輔（男子１５番） 土井佑作（男子２７番）
加害者 ：堤 洋平（男子１７番）
死因 ：足部、頭部被弾
補足 ：分校前にて堤と合流、山道へと足を運び、堤が殺害した殿村の死体の周りに
地雷を設置。しばらくして土井がその罠に引っ掛かった。その後遭遇した
九十九を飛苦無で殺害。そして津崎も手に掛けようとしたが、やる気であった
津崎はそれを巧妙に避け、狙撃された。なんとか堤が津崎を殺害したが、
大腿骨を砕かれてもう戦闘不能だと悟った綱嶋は、堤に自分を殺害するよう
指示。最後の最後まで巧みな作戦で自らを撃ち抜かせた。
男子６番 棚瀬 良介
支給武器：暗視スコープ
被害者 ：なし
加害者 ：寺井晴行（男子２４番）
死因 ：頭部被弾
補足 ：出発後、遭遇した塚本と遭遇。団条に襲われた際に、助けられた。津崎と
遭遇した際に二の腕を撃たれるが、共にいた塚本は失血死してしまう。
放心している時に立川と出会い、合流する。寺井に襲われた際には立川が囮に
なると宣言し、逃がしてくれた。飛田、徳永と相次いで遭遇し、寺井がやる気で
ある事を伝えたが、最後には寺井と再び遭遇してしまい、頭部を撃ち抜かれた。
結局、最後まで誰も殺すことは無かった。
【残り６人】
Prev / Next / Top
|
|