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『続いて、次のニュースです』

 朝食を取っていた一組の夫婦とその子供が、そのニュースを見ていた。
3人の表情は苦痛に満ちていて、重苦しい空気が漂っていた。

『2年ぶりに石川県で行われたプログラムが、先程午前6時2分に終了したとの報告です。戦闘開始から終了 までの時間は25時間18分とのこと。死亡した生徒41人の死因は、銃によるものが28人。刃物によるものが 5人。爆発によるものが5人。その他が3人との報告を受けております』

「あ……お兄ちゃん……!」

「晴行?!」

見た。テレビにはテロップで、優勝した男子生徒。と流れていた。
その生徒はうつむいたまま、しかしまっすぐにテレビ画面を見ていた。何かを訴えている目だった。

「迎えにいきましょ……ほら、晴信も……!」

慌てて味噌汁を飲み干して、母親がその少年に言う。
そして、家には誰もいなくなった。




 それから、一家は岐阜県に引っ越すこととなった。

寺井晴行は最後にその親友に言った通り、卒業後に門並の専属の兵士となった。門並も晴行のことを気に入っ たらしく、自分の考えを兵士蒔田と共に話したらしい。
やっぱり、門並にも訳があったらしい。妹をプログラムで無くし、最初はいらだっていたものの、やはり寺井の考 えに惹かれるものがあったらしい。
家族もその考えを認めてくれたらしく、最初は渋っていたものの、最後には折れ、許してくれた。
ただ、彼が殺したクラスメイトの数が12人ということを聞いた瞬間、母は失神してしまったが。











 ある居酒屋にて。

「たださ、やっぱり反抗してくる生徒ってのはいるもんさ。そういうときは、己の身を守る為に殺さなきゃならない んだ」

「そうですよね、蒔田さん。自分が死んでしまったら、なんで今まで生きていたのかが分からないですよ。私も、 死ぬ前には自分の考えをすべて誰かに引き継いでもらうつもりです」

「そうか。やっぱりさ、自分の意志が確定しているっていうのはいいよ。そうやって、自分の罪を償っていくんだ な」

「でもこの間、自分の弟までがプログラムに巻き込まれたんですよ。首輪を外そうとして、爆死したことになって ます」

重苦しい口調で、男が言った。
もう1人の蒔田と呼ばれた男は、酒を飲みながら喋りはじめた。

「ふぅん、偽装したのかい?」

「そうです。そして……俺が処分するように、門並先生に命じられました」

「門並先生が……? やっぱり、辛いんだろうな? いつもあのロングスカート穿いているんだろ? 妹さんの形 見だからさ、気性が荒くなるのかもしれない……ま、そいつのことも含めて、全部覚えてやるんだな」

「ですよね……その時優勝した少女が、自殺したんです。僕は……ちゃんと教えてやるべきだったのに……」

「寺井……誰だってミスはある」

「でも……!!」

「大切なのは、同じ失敗を繰り返さないことだ。そして、これからも自分の信念を貫いていけ。わかったか?!」

「はい! ありがとうございました!」




 その2人は、のちに政府と戦うことになるのだが、まだまだそれは、先の話であった。
 こうして、彼が兵士として担当した生徒達は、永遠に彼の中で生き続けることとなった。









 いつまでも、いつまでも……。

































 誰もがその人の存在を忘れた時、その人は本当に死んだことになる。
 誰かがその人の存在を覚えていれば、その人は心の中で永遠に生き続けるのだ。

















【 完 】





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