059



 その光景を、全て僕は見ていた。
 何度も、抵抗しない仙道美香をバットで殴り続ける、土門英幸の姿を。

 僕の、せいだ。
 僕が、仙道の左目を傷つけたから。
 僕が、仙道を殺したんだ。

 土門英幸が仙道美香に勝てるはずがないのだ。
 あいつは弱くて、だけどズルくて。卑怯な手で、勝った。

 だけど、きっかけを作り出したのは僕。
 紛れも無く、僕。

 僕が、殺した。
 僕が、殺してしまった。

 黙っていればばれない。
 知っているのは僕と仙道だけ。そして仙道は死んだ。
 僕が言わなければ、誰にもばれない。絶対に、ばれない。

 僕が加担しただなんて、彼女になんか知られたくない。
 彼女に知られるくらいなら、いっそすがすがしく死んでやる。

 僕はもう、以前のような奴じゃない。
 僕はもう、生まれ変わったのだから。

 そして。
 土門英幸を許すわけにはいかない。
 死体になっても、あそこまで酷い仕打ちが出来る奴はそういない。
 まさに、卑怯。まさに、鬼畜。
 決して、生かすものか。お前だけは、生かして帰すものか。

 土門は仙道の死体を殴り続けている。
 こちらに気付く様子の欠片もない。

 やるなら、今しかない。

 僕は、バッグの中から小型のバッヂのようなものを取り出す。
 そして、それを土門の放置した荷物の中に、そっと入れる。
 急いで戻ってきた。またバッグの中から、端末機を取り出して、その電源を入れる。
 広大な敷地が表示されて、その上に緑のマークと黄色のマークが、近い位置にポツンと表示されている。

 発信機

 端末機は現在地と発信機のある場所を指し示している。
 これで、僕は常に土門がどこにいるかわかる。
 この端末機が、土門の居場所を晒し出してくれる。

 土門。
 お前はもう、生きて帰ることは出来ない。

 お前は、俺が殺してやる。
 俺が、きっかけをつくってやる。

 土門。
 お前は、最低な奴だ。


 ……さよなら、土門。
 地獄でも、二度とその面、見せんなよ。



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