19.首  輪



「三島……」

 5発の弾を出した時点で、チーフススペシャルは弾切れとなった。そこで弾を取り替えていた時に、6発目が鳴り響
いた。急いで弾を詰め替え、茂みから顔を出すと、そこには横たわる松岡と、そして銃を構えている三島がいた。

「よぉ、西野。久しぶりだな。悪いね、美味しいところだけ取っちゃって」

「三島、お前……」

「ん、何? 戦うんだろ? お前がその気じゃなくても俺はお前を殺すよ。だって……」

次の瞬間、三島から殺気が吹き出る。危険を察知して、茂みの中にもぐりこんだ。急いで走り、先程松岡に掃射を喰
らった吉田の方へと向かう。

「どんな手を使ってでも、お前を殺してやる。……って、決めたんだぁ」


 ダァン、ダァン……!!


躊躇せずに、三島は引き金を二度引いた。こちらの姿は見えないはずなのに、際どい所を撃ってきた。
特に二発目は髪の毛を掠った。腰を屈めて走っていたのだから、普通の姿勢でいたら、非常に危ない。

「音でばれてますよぉ、西野君!!」


 ダァン……!!


銃声がした瞬間に、一気に前へと飛び込んだ。直後、自分のいた位置に銃弾が撃ち込まれる。それは木の根に当た
り、弾けた木片が顔に当たって傷をつけた。

「大丈夫か、吉田……!」

吉田は地面に伏していた。どうやら足をやられたらしい。今、無理に動かしても三島の標的になるだけのような気がし
たので、やめておいた。それに、ここにいると俺を狙った三島に巻き込まれる可能性がある。

「大丈夫だから……頑張って……!」

「オーケー……」

もう吉田は使えない。実際、吉田はいい動きをしてくれた。松岡の動きを制限するのに右腕を切断するという豪快な
技をたたき出してのけた。名誉の負傷というやつだ。
それに対して、俺の傷は三島から受けた左肩の銃弾の掠り傷だけ。大丈夫だ、いける。

「西野、何処いったんだ? 右手……滅茶苦茶痛いんだけどな」

「おお、そうか。それはすまなかったな」

吉田から十分に離れた位置で、俺は声を発した。すぐに銃声が聴こえてきたが、既にその場所に俺はいない。いい
加減、その戦法にも飽きてきた。
仕方がないので、姿を現す。そう、それは大胆な賭けだ。俺が先に撃てれば、俺は勝てる。
姿を現したとき、三島は別の方向を見ていた。俺は、勝ちを確信した。チーフススペシャルを放つ。そして、直後に三
島の右側に、もう一発。
三島は俺が銃を撃つと気付き、咄嗟に避けた。そう、人間が本能で避ける方向、利き腕とは逆の方向に。即ち、俺か
ら見て右側へと。

「ぐあぁぁっっ!!」

銃弾は真っ直ぐに三島の胸部を貫いた。そして、そのまま三島が倒れる。苦しそうにしている三島にとどめを刺そうと
したときだ。三島の眼が、笑っていた。

「はっ……はっ……西野、俺の……か、勝ちだ……!!」


 タァン……!!


三島が、俺から外れた方向、茂みの中に一発撃った。そう、その先には、確か。
つまり……三島の倒れた位置から、彼女が、見えたのだ。

「……吉田ぁ!!」

慌てて、吉田がいた位置へと向かう。そこに待っているのは、頭部が弾けとんだ吉田の無残な死体だった。
頑張ってと激励を言い残したまま、こんなにもあっさりと、死んでしまうなんて。


 タァン……!!


再び銃声。
何事かと元の位置に戻ってみると、驚いたことに、三島が、自分のこめかみを撃って死んでいた。自殺だった。

「なに……してんだよ? なにしてんだよ、三島?!」

わからない。三島が、わからない。
何故こんなことをしたのか、全く持ってわからない。




 どうして?










 ふと、気付いた。


 もう生き残っているのは、会場内には俺しかいないのだと。






「おい、どういうことだよ……? 俺、生き残ったぞ? 俺が優勝なんだろ?!」






 『言っただろ? どんな手を使ってでも、お前を殺してやる……って』



三島の声。
まさか。まさかまさかまさか。

「連動……なのか?」

三島が、俺のペアの吉田を殺した。必然的に、連動制度で俺の首輪は5分後に爆発する。連動解除をする為には、
俺は三島を殺さなくてはならない。
だが。





 三 島 は 、 自 殺 し た の だ 。





「おい……おい!! じ、じゃあ俺はどうすればいいんだよ?! 三島は死んじまったんだぞ?!」



 ピ……、ピ……。



首輪が、鳴り始める。
死の宣告。



 ピ、ピ、ピ、ピ。



「嘘だろ……? 嘘だって言ってくれよ!! 俺が優勝なんだろ?! 最後の一人なんだろ?!」



 ピピピピピピピ。



首輪は、鳴り続ける。
止まることは、なかった。

「おい!! 道澤ぁぁっっ!! 聴こえてんだろぉっっ?! どうすりゃいいんだよぉぉぉっっっ!!!」

畜生。まさか、そんな。




 ピ―――― 。




畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生
畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生
ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうち
くしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちく
しょうちくしょうチクショウチクショウチクショウチクショウチクショウチクショウチクショウチクショウチクショウチクショウチ
クショウチクショウチクショウチクショウチクショウチクショウチクショウチクショウチクショウチクショウ!!!




「ちっきしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!!」





























 ドバァァァァンッッ!!


























 静寂の中、一際大きな爆音。
 こうして、連動試行プログラムは、終わりを告げた。






  男子5番  西野 直希
     6番  三島 幸正
  女子5番  吉田 由美   死亡



【残り0人 / ゲーム終了・以上吉田町立古川中学校3年A組プログラム実施本部選手確認モニタより】





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