第二章　天国と地獄　−　８

１３


　午後一時。
 　昭平達は、地図で言うとＣ＝３、丁度会場の中心辺りにいた。

　あれから、前田と二人で何処に行くべきかを決めた。目的の人物である祐介を探すために一番効率のいい方法は
ないものか、そう考えた結果、几帳面な性格であるから、きっと禁止エリアの近くにはいないだろうという結論に至っ
た。先程の放送で次回禁止エリア入りが決定している分と、中学校、つまり既に禁止エリア入りしている本部のエリ
アの近くを省いた結果、おそらくまだ周りが禁止エリアに指定されていない会場の中心辺りに潜んでいるのではない
かと考えた。
 そう決めると、二人は慎重に『橋本』宅から出て、行動を開始した。はじめ、この家に入ったときは気が動転していて
無我夢中だったが、改めてこの戦闘フィールドに立つと、かなり静まっていた。それは本当に、このエリアには自分達
しかいないのではないかと錯覚してしまうくらいだ。しかし、安心は出来ない。みんなはバカじゃない筈だ。きっと、気
付かれないように行動しているに違いない。だから、注意が散漫になったところで、突然目の前に現れたりすることも
あるかもしれない。その点で、二人で口喧嘩（それも特大の声でだ）をしていた自分達は、相当愚かな行為をしてい
たのだろう。この静けさを見ればわかる。恐らく、かなり響き渡っていたのではないか。正志のような信頼できるクラス
メイトのみに気付かれて、本当によかった。
　ふと、疑問点が浮かんだ。
「あのさ、前田。このゲームに参加する奴って、本当にいると思うか？」
　後ろに立っている前田に、昭平は振り向きもせずに言った。
「矢島さんは、その気になっているんじゃないの？」
「そうだけどさ、それも、中野が死んだから仕方なしにやった行為かもしれないだろ？　ほら、町田……みたいにさ」
既に死亡しているクラスメイトの名前を出して、少し胸が痛くなった。あの巨体が、この世にいない。それもゲームが
始まる前に退場してしまったなんて。
「そうね、確かに、浅野君がその気になって中野君を殺したのなら、辻褄が合うけれど」
　早紀は、殺し合いに参加はしない。それはどうやら前田にとっては大前提のようだったが、勿論昭平も同じ考えだっ
た。早紀は、絶対にこのゲームに参加するようなことはない。それは日頃の彼女から見て、当然の考えだ。だが、浅
野雅晴（男子一番）はどうだったのだろうか？
 浅野について、昭平は何も知らない。いや、恐らくクラスの中でも誰一人として彼の家庭事情を知るものはいないだろ
う。彼は、無口だったのだから。だから、彼がこのゲームに参加した可能性はゼロではない。仮に、彼が中野智樹
（男子六番）を殺したとする。すると共に行動していた矢島は当然の如く焦るだろう。なんせ、自分の首輪が爆発する
のだから。だから矢島は浅野を殺した、あるいは早紀を殺したのだろう。そして連動制度によって、一番ペアは……。
「でも、だったらさ。近藤君と、奈美はどうなるの？」
　前田が続けてそう言った。
「どうって……、誰が殺したかってことか？」
前田はコクンと頷いた。確かにそれはそうだ。結論は出ていないものの、三番ペアが誰かに殺されたのは明らかな
のだ。それも、銃を持ったクラスメイトに。やはり、殺し合いに参加した生徒は、いるのだろうか。それとも、それにも理
由があったのだろうか？
　昭平が悩んでいると、突然何か遠くのほうで音がしたことに気がついて、慌てて振り返った。背後で、何かを踏みし
めるような音が、聴こえたのだ。
 前田も気がついたのだろう、話をやめて、スタンガンを握り締めてじっと息を殺している。ガサッ、ガササッと交差路の
脇の草むらが激しく揺れていた。そして、その中から何かが姿を現した。
　猫だった。
のそり、と出てきたその猫は、車も通っていない車道を悠々と歩いている。昭平も、前田も息を吐いた。そうだよな、
猫とかだって、いたって何もおかしくなんかないもんな。
　そう思って、安心して歩を進めようとしたときだった。

　　パァンッ！

　突然、銃声がした。咄嗟に頭を屈めて、地面に伏せた。猫のいた辺りが弾けて、アスファルトが少し欠けたのがわ
かった。猫は驚いて、猛ダッシュをして走り去ってしまった。
　誰だ？　一体、誰が猫なんかを狙ったのだ？
拳銃を支給された吉村の顔が目に浮かぶ。違う、吉村はそんなことはしない。しようとしても、正志が止めるはずだ。
それじゃあ、一体だれが？
　自分達が出発する前に鳴り響いた銃声が、脳内を過ぎった。

　まさか。

「うわぁぁっ！」
　突然、誰かが突っ込んできたのがわかった。その手に何かを握っていることがわかった瞬間、昭平は身の危険を感
じた。咄嗟に、前田を突き飛ばして、自分も道端に転がり込んだ。
 ガキッ！　と音がして、今まで自分達がいたところの家の塀が崩れる音が聞こえた。転がり込んだまま上手く立ち上
がり、その襲撃者の顔を見る。
「杉本……！」
「殺してやる……殺らなきゃ、俺達が殺られるんだよぉ！　殺るっきゃねぇんだ、死ね！　死ね！　死ねぇ！」
　一瞬、昭平はその光景が信じられなかった。今その手に鉄棒を握っているのは、間違いなくバスケ部で共に汗を流
した、杉本高志（男子四番）だったのだ。杉本は、躊躇せずに第二打を振り回した。瞬時の判断で右に跳び、両手で
頭を屈めた。薙ぎ払われた第二打は昭平の頭すれすれを通過し、空振りをした。
「くそぅ！　なんで死んでくれないんだ！」
「目を覚ませ、杉本！　なんで殺し合いなんかに参加するんだ？」

　　パァン！

再び銃声がして、そちらの方を向く。その方向に、杉本のペアである都築優子（女子四番）がいた。その手には、拳
銃が握られている。その銃口は、前田の方に向いていた。
「前田！　がっ……！」
　一瞬の余所見を、杉本は逃さなかった。すかさず鉄棒を真っ直ぐに構えて、昭平の腹部を思い切り突き飛ばした。
あまりの痛さに、息が出来ない。胃液が逆流をしているのがわかった。
「死ぬのは嫌だ……お前らなんかと一緒に死にたくねぇんだぁ！」
腹を押さえてうずくまっている昭平に、今度は上から鉄棒が振り落とされた。それは、昭平自身は知らないことだった
が、近藤悠一（男子三番）を殴り倒したときとは違い、躊躇などは微塵も感じられなかった。途端、昭平の目が見開い
た。
　殺されて、たまるか。
「死ねぇぇっ！」
　昭平は、瞬発的に横へ転がった。鉄棒は瀬戸際まで振り下ろされていたが、やはり掠めただけで、ダメージは食ら
わない。そのまま再び転がり起きると、昭平は腰にさしていた支給武器の果物ナイフを取り出した。そのまま鞘を抜
き、刃を出す。杉本が再び鉄棒を振り上げたが、その時既に昭平はナイフの切先を、杉本の右腕に突き刺していた。
「く……ぅぁあ！」
痛みが徐々に伝わってきたのか、杉本が呻き声を上げた。昭平はすかさずその傷つけた右腕を蹴り上げた。ナイフを
抜いて血が流れ出ていたところにそれはクリーンヒットし、握っていた鉄棒が宙を舞った。
 さらに昭平は前田達の方へ目を向けた。銃声がしないと思ったら、どうやら揉み合いになっている。銃を奪おうとして
いるのだ。途端、前田が後ろに躓いて転んだ。都築が、その隙に一気に離れて、そして。
　前田に向けて、引き金を引いた。
「前田ぁーっ！」
パァン！　と弾けた音がして、前田の体が一回揺れた。その時には既に昭平の体は動き出していた。その鍛えられ
た足はすぐに都築の元へとその体を運んだ。そして、勢いを殺さずに、そのままタックルをかました。女の子は大事に
しろ？　知るか。
「きゃあ！」
　都築は昭平のタックルをまともに食らい、横方向に吹っ飛んだ。そのまま昭平も倒れて、華奢な右腕から転がり落
ちた拳銃、ブローニング・ハイパワーを掴み取った。そして、急いで都築の元を離れて、前田の方へ駆け寄る。揺さぶ
った。
「前田、大丈夫か？　前田！」
「……少し痛いけど、丈夫ね、このチョッキ。なんとか、助かったみたいよ……」
そう言って、自分の腹部をパンパンと叩いている。防弾チョッキだ。防弾チョッキのお陰で、なんとか前田は都築の銃
弾を逃れることが出来たのだ。万歳。
　視線の端で、苦痛の声と共に鉄棒を拾おうとする杉本の姿が、チラリと視線に入った。すぐさま、ブローニングを杉
本の方に向ける。杉本がそれに気付いて、動きを止めた。
「動くな」
昭平がそう言うと、ゆっくりと杉本が両手を上げた。そして、後ずさりをして、倒れている都築を起こした。昭平は、瞬き
もせずにその光景を見ていた。二人が、自分を見ている。
「殺したくないんだ。さっさと、何処かに失せろ」
　二人とも、動かない。
「失せろ」
改めてそう言うと、やっと束縛から解放された鳥のように、二人は一目散に走り去って行った。その姿が見えなくなる
まで、昭平は瞬き一つしなかった。
「高松君……！」
「間違いない。近藤達を殺ったのは、あの二人だ。完璧に、ゲームに参加してる」
昭平は、言い切った。手に握ってるブローニングの重みが、ずっしりと伝わる。この小さな拳銃が、恐らく近藤達の命
を奪ったのだと思うと、なんだか悲しくなってきた。不思議な出来事だ。今までは存在しているのが当たり前だったの
に、今ではもう存在していないのだ。この矛盾、わかるか？
「くそ……こんな殺し合いが無意味だって、わかってんのか？」
昭平が呟くと、前田が杉本の残していった鉄棒を拾い上げた。所々がへこんでいて、なにやら紅い物がこびり付いて
いるように見えたようで、慌ててそれを地面に落としてしまっている。
「やっぱり……その気になっている人はいるんだね」
「……残念だけどな」
　そう呟いた時だ。背後に、人の気配がした。また奇襲か？　そう思って振り返り、拳銃を前に構えた。
「わっ！　違う、昭平、僕だよ！」
それは、奇跡なのだろうか、それとも偶然なのだろうか。そこに立っているのは、別の男子。その顔に笑みが浮かん
でいるが、それは決して怪しいものではない。純粋な、安堵の笑みだ。
「祐介……！」

　そこには、昭平の唯一無二の親友、大原祐介が、立っていた。

　それはあまりにも唐突過ぎて。
 　唐突、過ぎて。



　　　【残り９人】





１４


「高松君、こんなもので、いいのかな？」
　栗田真帆（女子二番）が、腹部に貼り付けた湿布を軽く叩いて粘着力を高める。昭平は一瞬息が詰まるほど痛かっ
たが、まぁ仕方ない。杉本に突かれた腹は酷い痣になっていて、急いで手当てをした方が良いと、祐介がここに連れ
てきてくれたのだ。
　ここは、Ｃ＝４に位置するやや大きめの二階建ての一軒家。表札は確か、『一』の一文字だったような気がする。一
体どういう読みをするのだろうか？　『はじめ』とでも読むのだろうか？　そう呟いたところ、栗田が「『にのまえ』って読
むんだよ」って言っていた。そういえば、彼女は漢検を持っていたような気もする。
 祐介のペアである栗田は、出発してからずっとここにいるのだという。先程の杉本との戦闘も、近くだから銃声などが
かなり響いていたらしく、衝動的に祐介が偵察しに来たのだとか。栗田は、危ないから、と大人しく家でひっそりとし
ていたらしいが。
 祐介は、その『一』さんの家に自分達を招待してくれた。栗田も最初は驚いていたものの、一応納得したらしく、快く
引き受け入れてくれた。こうして、昭平と前田は、今は無事この家にいる。
 栗田に支給された武器、それが武器なのかどうかはわからないが、救急箱というものを使って、昭平の傷を手当てし
てくれていた。日頃から慣れていたのだろうか、結構手際が良い。こうして簡単に湿布を貼って、とりあえずは処置を
終えた。前田も都築優子ともみ合った際、擦り傷を負っていたが、消毒液で簡単に手当てをしてしまった。今は、二の
腕と膝に絆創膏を貼っている。
 祐介の武器は、これも武器かどうかわからない代物だった。カーキ色のプラスチックの端末のような物で、電源を入
れるとディスプレイに白い光をバックに、簡単な地図が表示される。それはこの会場の地図で、今、自分がどのエリア
にいるのが一目でわかるとか。表示される範囲は約５０メートル程、その範囲内に他の生徒がいる場合、その生徒も
持ち主と同様に黄色い星印で示されるのだとか。ようは、探知機だ。全員に平等に巻きついている首輪に反応して、
この機械は他の生徒を探知する。どうやらそれが誰なのかまではわからないようなので、結局は自分で行って確か
めるしかないのだが。
「あのさ、ところで、一体何があったの？」
　落ち着いたところで、祐介がそっと昭平に尋ねてきた。自分達の傷を見て、そして銃声が聞こえたことから、ショック
を与えないように優しく投げかけてきているのが、目に見えてわかった。
「襲われたんだ。杉本と、都築に。撃退したんだけれどな……完璧に、やる気になっていたよ……」
昭平はそう言うと、腰にさしていた果物ナイフを取り出した。杉本の腕を傷つけたそのナイフには、血が付着してい
た。
「これが俺の支給武器だ。杉本は多分鉄棒を支給されたんだと思う。それで殴りかかってきたから、咄嗟に杉本を傷
つけたよ。前田も、都築に銃で撃たれたんだ」
　さらに続けようとすると、前田が手で制して言った。
「まぁ、結局は一発も当たらなかったんだけれどね。それで、高松君は優子を止めようとして、その銃を奪った。それ
で、あの二人を撃退したのよ。ちなみにあたしの武器はこれ。スタンガンって言うの」
　まただ、また前田は、防弾チョッキの存在を告げなかった。本当は弾は当たっていたのだ、だが防弾チョッキのおか
げで助かった、それだけのことなのに、何故正志の時と同様に隠しているのだろうか。
「そうだったのか……。じゃあ、その拳銃はもともとは都築さんに支給された物だったんだね？」
前田が頷くと、祐介は大きく息を吐いた。そして、ゆっくりと喋り始めた。
「もう気がついてるかも知れないけれど……。実は、近藤と小島さんを殺したのは、杉本達なんだ」
　突然そんなことを言われて、昭平は戸惑った。前田も同じで、顔が驚きの形になっていた。見たのか？　祐介達
は、殺害現場を目撃したのだろうか？
「それは……どういう……」
「出発してから、僕はどうしても昭平に会いたかった。だから栗田さんと一緒に、あの学校の入口で待っていたんだ。
そして、当然次は近藤と小島さんが出てくるでしょ？　その二人にも声をかけようとしたんだけれど……、突然近藤が
校舎に戻っていったんだ。後を小島さんが追いかけてった。その時だよ、次に出発したあの杉本が、近藤を鉄棒で殴
り倒したのが見えたんだ。挙句の果てには、都築さんが小島さんを銃か何かで撃ったんだ。だから怖くなって、一目
散に逃げた」
　祐介は一気に喋ると、ふぅと息をついて、ペットボトルを開けて水を一口飲んだ。続けて言った。
「そして、二人で逃げて、とにかく遠くへ行こうと思ったんだけど……、出来なかった。足が思うように動かなかったん
だ。だから、この家に潜入することにしたんだ。それ以来、じっとしてた」
　祐介は再び黙った。
　ああ、やはりそうだったか。杉本が襲ってきてから、なんとなくそんな感じ、というよりも確信していたのだが、やはり
近藤達を殺したのは杉本と都築だったのだ。信じられなかった。何故、人殺しという行為が、簡単に出来てしまった
のだろうか。
「それにしても、変ね」
　前田が、今度はそう言った。
「何が？」
「だって、杉本君達はあたし達が出発する一つ前に出発したんだよ？　だったら、なんであたし達は襲わなかったん
だろう？」
　確かにそうだ。本来なら、杉本達は出発してすぐに小島奈美を殺したはずなのだ。そうでなければ、三分後の首輪
爆発のタイムラグに矛盾点が生ずる。その間に、自分達を襲わなかった理由は、何だ？
「近藤が、杉本達を殺そうとしたんじゃないかな？」
　今度は祐介が言った。
「だってさ、近藤は小島さんが殺されたんでしょ？　近藤の首輪が爆発とか、そういった話を聞いてるとさ、どうも杉本
は近藤を殺してないんじゃないかと思うんだ。そりゃあ、致命傷かもしれないけれど」
　そうだ、近藤の首輪が爆発する。それは即ち、近藤がそれまで生きていたということだ。死んでなどいないのだ。
「杉本君は、手加減したのね、きっと。まだ、殺人に対する抵抗があったんだと思う」
「そんなバカな。俺を襲ったときは、そんな手加減なんて微塵も感じなかったぞ？」
「それは吹っ切れたからじゃないの？　本当は殺してなんかいないのに、殺してしまったという罪悪感に捉われてさ。
小島さんは優子が殺したんでしょ？　問題は優子のほうよ」
　都築優子が、小島奈美を射殺した。それは祐介の発言から見て間違いない。となると、近藤が死んだ間接的な要
因も、都築の仕業ということになる。何故、都築は簡単に人が殺せたのだろうか？
「町田だ……」
　祐介が、呟いた。
「都築さんってさ、出発前に町田に襲われたよね？」
祐介が続けて言う。昭平は、記憶の片隅からその出来事を引っ張り出した。それは、ほんの数時間前の出来事だ。
町田宏が連動制度によって首輪が爆発することを知らされた時、既に自爆警告音は鳴り響いていた。その時だ、確
か町田が、都築に向かってナイフを向けていたような気がする。だが、それが何か？
「そっか……だから、みんなも襲って来るんだと勘違いしたのかも」
前田は納得したように言ったが、どうも昭平には理解できなかった。それは確かに、襲われるというのはいい思いは
しない。だが、逆にそれだけで発狂するようなことだろうか？　確かに、都築が出発する時、顔色はその影響もあるの
かあまりよくはなかったと思うけれど、それだけではとてもクラスメイトを殺すという理由には結びつかない。
 だが、都築が小島を直接殺しているのは事実だ。それはもう紛れもない不変の出来事であるし、それに反対すること
も出来ない。
　だんだん、クラスメイトが壊れていく。そのことが、昭平にとっては耐え難い出来事だった。
 　いつか、自分も発狂するときが来るのだろうか？　目の前にいる親友を殺してしまうことがあるのだろうか？
 　そうはさせない。自分は最後まで自分であり続ける。そうしないと、本当に、後悔してしまいそうだったから。

　時刻は二時をまわった。なんとなく、空の雲行きが怪しかった。



　　　【残り９人】




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