20



 エリアF=4、矢代中学校。


生徒を全員出発させてから20分が経った。現在時刻は5時10分。早速、このエリアが禁止エリアに指定された。つ
まり、すでにこのエリアには誰も生徒がいないことになる。襲撃される心配がなくなったということだ。
だからだろうか、先ほどまで68人もいた広間から、教官の道澤が出てくきた。特徴である吊りあがった目は、落ち着
いているせいなのか、今のところは穏やかになっているようだ。

「道澤先生、また生徒を怖がらせたんですか?」

思い切って話し掛けてみる。自分は、今回から道澤 静教官の配下に所属する事になった。それに今回は彼女とは
はじめてのプログラムでもある。これからの長い付き合いだ、仲良くなっていた方が良いだろう、そう考えての行動だ
ったともいえる。それを知ってかどうかは知らないが、道澤は言った。

「蒔田君、増美の時もそうやって話し相手になっていたそうね」

兵士蒔田は、ははっ、と軽く笑うと、資料を差し出した。それを道澤は両手で受け取ると、道澤は現在までの死亡者
数を確かめ、まぁまぁかな……と呟いた。
その言葉に納得がいかず、蒔田は更に話し掛ける。

「まぁまぁ……ですか。もう既に3人も死んでいるのですが…」

そう言うと、道澤は懐かしそうに目を細め、ふふっと口元に笑みを浮かべた。

「増美が受け持つクラスは不思議な因縁なのかしらね、これくらいのペースが普通だったみたいね。貴方、増美が担
当教官をやめたから私のところへ来たのよね?」

「は、はい」

門並増美、かつて自分が勤めていた担当教官の名。
初めてのプログラム以来、特に仲がよくなり、それから何度か付き合った仲だ。その始めてのプログラムが、絶対に
忘れられる事のないものになったおかげで、ここまで自分は生きてこれたのだ。それは、増美が始めて泣いた日、そ
して、最後に泣いた日でもあった。
その24時間強というハイペースなプログラム以来、ずっと3日以上かかるローペースのプログラムばかり受け持って
きたのは、一体何の因縁なのだろうか。

「彼女、なんで教官辞めたのかわかる?」

その笑みは、多分知っているのだろう、何故増美がやめたのか。
蒔田はなんとなく気まずい雰囲気になりながら、そそくさとデスクワークへと戻った。まさかこんなこと、自分の口から
なんて言えたものじゃない。

「じゃあ、私も仕事に取り掛かるかな」

わざと聞こえよがしに話し掛けてきたので、蒔田もまた、口元に笑みを浮かべた。



 やれやれ、この人と付き合っていくのは大変そうだ。
 でも、やりがいはあるかな。





 蒔田信次、32歳。

 先月、担当教官門並と結婚。







   【残り65人】



 Prev / Next / Top