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 エリアG=2。茂み内にて。

「ねぇ……快斗はさ、日高君はどうだと思うの?」

うっすらと空が明るくなりかけたころ、唐突に湾条恵美(女子34番)が言った。
先ほどまで彼女は疲れきった体力を回復するために仮眠を取っていたのだが、やはり放送の時間が近づいたせいだ
ろうか、一時間ほどで起きてしまったようだ。
ここ一時間ほどは嘘のように静けさに満ちてはいたが、やはり秋吉快斗(男子1番)も不安だったのだろう。今は代わ
りに仮眠を取ろうにも取れそうにない。まずは、放送が重要だ。

「どうって?」

「まださ、私は信じられないの。日高君って、怖い人じゃない?」

それは一時間ほど前の話、日高成二(男子28番)のことだった。
彼は小学校に集まるように『野良犬』のリーダー、望月道弘(男子32番)に言われたと言っていた。もし24時間経っ
ても自分たちが無事なら、その時は小学校に来てくれ、と。

だが、本当に信じていいのか? そう恵美は言っているのだ。

「いや、別にさ。あいつがもしやる気だったのなら、最初からあのナイフで俺たちを襲っているはずだと思うんだ。でも
実際はそんなことやっていないだろ?」

「それはそうだけど……、やっぱり、怖い。だって私、日高君のこと何も知らないし…」

「それは俺だってそうだよ。でも、この状況下、誰も信じられなくなるってことはかなり危ないと思うんだ。多分さ、死ん
だ坂本も橋本も、自殺じゃないとしたら殺されたってことになる。いや、時間的に坂本は誰かに殺されたんだな。で
も、……それでも俺は信じるよ。誰も好んでこんなゲームになんか乗っていないって」

そういえば、大きな爆音も聴こえた。微かだったから恵美は起きなかったけれども、それも気になっていた。

「恵美。ちょっと端末機、見てくれないか?」

情報端末機は常に恵美が持っている。さしたる理由はないものの、やはり支給された本人が持つべきだと考えたの
だ。それに万が一はぐれてしまう事があっても、それさえあればいつでも安否が確かめられるからだ。
そして、恵美は端末機を見た。電源を入れた直後、その顔に衝撃が走ったのが、わかりやすいほどにはっきりしてい
た。その表情を見て、快斗はいやな予感がした。



 まさか。

 まさか、また新たに死体が…。



「貸してみろ」

震える手をしっかりと掴んで、快斗は恵美から端末機をそっと取った。画面端に表示された赤い名前。すなわち、新
たなる死者だ。やはりな……と思う反面、またか、とも思った。


 その名前は、湯本怜奈(女子32番)だった。


「怜奈……なんで、怜奈が……」

湯本に対する知識は、快斗にはあまりない。
少しだけ髪を染めてはいたが、別におとなしい生徒のはずだった。自殺なんて決してするようなやつではない。誰が
彼女を殺したんだ?
出席番号とは、恐ろしいものだ。……考え付く相手は、まさにその1つ前に出発した望月が怪しく思えてしまう。
トトカルチョで上位だった……か。そんな理由では流石の彼でも乗らないだろう。そう、いくら馬鹿だとしても、そんな
結論に至ることなどないはずだ。



 日高は、本当に大丈夫だろうか。







   【残り65人】



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