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 一日目、午前6時。
 プログラム開始から、3時間24分経過。


 突然、東京都東之島内に大音量が響き渡る。


「な、なにこれ?!」

曲名はわからないが、どこかで聞いたことのある有名な曲だ。激しいファンファーレと共に、けたたましい打楽器が鳴
り響いている。

 なるほど、目覚まし代わりって事か。あのクソ教官も、少しはマシなこと考えているんだな。

快斗はそう思いながら、傍らで驚いて腰を抜かした恵美を見た。どうやら相当驚いたようだが、じっと見つめていると
顔を赤らめてそっぽを向いてしまった。

「どしたい? そんなに怖いんか?」

「うるさいなぁ……。誰だってあんな音楽を突然聴かされたら驚くよぉ……」

そうこうしているうちに、音量が絞られてきた。
時計を見ると、丁度6時から30秒ほどが経過している。これが朝の放送ってやつか。


“皆さんおはようございます、教官の道澤です。それでは、これから第1回目の放送を始めたいと思います。まず始め
に、ゲームが始まった午前2時36分からこれまでの間に死亡した生徒の名前を公表しますね。それぞれに配布した
地図に名簿も印刷していますので、是非活用してくださいね。禁止エリアはこの後発表しますから、準備して待って
いてくださいね”


死亡者はもう、わかっている。坂本理沙(女子7番)と橋本康子(女子17番)、それに湯本怜奈(女子32番)だ。別に
改めて確認するのは悪くないが、正直あまり気持ちのいいことでもなかった。
情報端末機……か。本当にあたりだかはずれだかわからない武器だな。


“まずは女子7番の坂本理沙さん。続いて17番 橋本康子さん、32番 湯本怜奈さんの3名です。どうも調子が出て
いませんねぇ。せっかく68人もいるのですから、もう少し人数の減りが早くてもいい筈なんですけれども。まぁ、次の
放送のときに期待することにしましょうかね。それでは禁止エリアの発表です。ちなみにエリアF=4はすでに禁止エ
リアになっているので、そちらも併せてチェックしておいてください”


地図は防水ファイルの中に赤と黒のサインペンと一緒に同封されていた。カラー印刷なのでちょっと書き込むのはもっ
たいないが、そんなことを言ってられる場合ではない。
快斗は、エリアF=4のマスを、赤で囲んでバッテンをした。


“それではまず午前7時からの禁止エリアです。午前7時からは、エリアG=2が禁止エリアになりますから、今そこ
にいる方はすぐに別のエリアへ移動してください”



 エリア、G=2だって?



「恵美。ここ、地図で言うとなんだっけ?」

「……G=2、だね」

念の為恵美も端末機を見たが、画面の隅に表示されているエリア区分表示は紛れもなく『G=2』と表示していた。


 なんてこった、もうここにはいることができないのか。



“次に午前9時からエリアH=10、11時からはエリアA=3がそれぞれ禁止エリアに指定されますので、くれぐれも
引っかかることのないよう、注意して行動してくださいね。それではまた6時間後に放送を入れます。皆さんも、これ
から明るくなりますから頑張ってくださいね。それでは”


ちなみにH=10、A=3共に海岸の隅の方だった。崖も近く遮蔽物も少ないので、おそらくここには誰もいないだろ
う。特に目立った音もしていないから、このエリアに他の生徒がいるとも考えにくい。移動するなら、やはり今のうちの
ほうがいいだろう。

「恵美、自殺したいか?」

「は? そんなの嫌に決まっているんじゃん、何言ってるの?」

「冗談だよ。じゃあ……さ。ここからまっすぐ東へ行った所にあるG=4に、家がある。そこへ行かないか? そこなら
日高が言ってた小学校も近くにあるし、なによりもここから近い。もしかすると食料や水もあるかもしれない。……いい
か?」

地図上の青丸。これが、民家だ。
恵美は自分の地図をよく見て、言った。

「別に断る理由もないし、死ぬつもりもない。いいよ、快斗についてく」

「そうか。じゃあ、慎重に移動しような」

そういって、早速快斗は立ち上がり、荷物を整理し始めた。



進むべき方向の空が、淡く明るくなり始めていた。







   【残り65人】



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