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 そう、それはあってはならないこと。
 全ては、事前に察知しなくてはならなかったことなのだ。



 道澤 静は、ぎりっと歯を噛み締めた。

前々からおかしいとは思っていたのだ。盗聴の記録から砂田利子(女子8番)が積極的に仲間を集めようとしている
のはわかっていたことだったが、ここ数時間、この中学校の近くに位置する材木置き場に留まりっ放しだ。その場所と
は、米原秋奈(女子23番)が開始直後からずっといた場所。ここに、続々と生徒が集まりだした。
それは本当なら不思議なことだし、だがこのプログラムという状況下なら、あってもおかしくないこと。そう思って、大し
て気にも留めていなかったのだ。

 だが、状況はだんだんおかしな方向へと移っていった。

本条 学(男子30番)達が、軽トラックを運んできたこと。そして、何か液状のものを注ぎいれる音。全ては、何かしら
の爆弾を作る作業だったのだ。



 ありえない。そんなこと、普通の中学生が出来るはずがないじゃない。



だけど、実際に起きてしまったのだ。

放送中に、米原秋奈がこの本部のあるエリアに、本来なら生徒が立ち入ることの出来ないこのエリアに進入してき
た。それは、なんとも不可思議だった。

 そして、次の瞬間。





 世界は暗転した。





激しい爆発音。咄嗟に頭を屈めたのが幸いしたのだろうか、机の中に身をもぐりこませ、次の瞬間には天井が崩れ落
ちてきていた。物が崩れる音と、兵士達が叫ぶ声が混ざり合って、辺りは死地と化した。
爆煙も30秒ほどで薄れてきた。そんなに大した爆弾ではなかったのだろう。多段階の爆発でなかったから、威力も
増幅はされなかったに違いない。



 とにかく、私は生き延びたのだ。



どうやら、真正面から米原は特攻を仕掛けたらしい。本部となっている職員室の入口付近は、ほぼ完璧に埋もれてい
た。そして、その下敷きになって動かない兵士の姿もある。



 畜生、たかが中学生に、こんなことをされるなんて……。

 許すものか。絶対に、許すものか。



道澤静といえば、教官の中でもかなりの高位にあたる。
大抵のプログラムを担当する教官は、見せしめとしてプログラムが始まる前に何名かの生徒を殺害する。だが、彼女
の場合、巧みな話術と表現力で、またある時には元担任のみを見せしめとして活用することもあるが、とにかく生徒
には傷一つつけないことで有名だった。
彼女が見せしめとして殺害した生徒はこれまでに4人。うち1人は、初めて担当を受け持った際、先輩に言われたよう
に見せしめとして殺害した。また1人は、同じく説明中に突然暴れだし、兵士達に暴行を加え、プログラムの進行に支
障をきたしそうな状況だったために、仕方なく殺害した。そして残る2人は、かつて自分が受け持った、最近流行の試
行プログラムの第一回目の際、命令されて仕方なく殺害した。
つまり、10年以上も担当教官を続けている彼女にとっては、それだけ生徒は殺さないという、一風変わった教官だっ
たのだ。そう、これまでは。



 だが彼女は考えた。

 ここで米原を始末しておかないと、今回のプログラムは大変なことになる。



 そのためには。





 殺す。







マイクのあるデスクの傍に立てかけてあったライフルを、手に取った。
自分は常にブレザーの懐に拳銃を護身用として持っていたが、十八番はこっちだった。

 AKカラシニコフ。これを、そっと窓の外へ向けて構える。

幸か不幸か、爆発によって窓に打ち付けてあった鉄板は半ばはがれかかっていたり、完全に吹き飛ばされたりして
いた。そのため、銃弾を止めるものはなく、また視界を遮るものもなかった。
その先にいる獲物、急いでこのエリアから脱出しようとして走っている米原秋奈の体は、だが完全にスコープで捕ら
えていた。

 そして。





 ズドォォ……ン!











 命中。



ゆっくりと、米原は倒れた。
その頭は弾けとび、紅く綺麗なものを撒き散らしていた。



「……メインコンピュータの状態は、蒔田君?」




「はい、他の接続されている子は大半が駄目になりましたが、親は内部には問題はありません」







「プログラムは、続行するわよ。いいわね?」



「は? ……は、はっ!」





 許すものか。

 絶対に、許すものか。



 プログラムは強制終了させない。

 ここで全員の首輪を爆破させたって、そんなものは解決にもならない。

 絶対にプログラムは成功させる。





 まぁ、ちょっとしたペナルティは、与えるけども。





  女子23番 米原 秋奈  死亡







   【残り45人】



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