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 G=5、矢代小学校。一階、保健室。
 本校舎は爆発の影響を受けずに無事だったようだ。


 湾条恵美(女子34番)は、保健室のベッドで横になりながら、情報端末機を眺めていた。そこには、また新たに3人
の名前が赤文字で表示されている。先程の銃撃戦、その死者であろう。
またか、と溜息を深くつくと、すぐ隣で椅子に座ってぼーっとしていた間熊小夜子(女子25番)が、こちらを向いていた
のに気付いた。その眼は、深かった。

「ねぇ、さっきから気になってんだけど……それ何?」

その指先には、恵美が握っている端末があった。
恵美は起き上がって、それを間熊に渡した。そして、自身もそれを覗き込む。

「これが、私に支給された武器なの。今自分達が何処にいるのか、あと……リアルタイムで死亡した生徒の名前を、
表示してくれる機能を持ってる」

「そうなんだ……」

色々と弄っている。全死亡欄という項目が表示されて、そこに今まで死亡した生徒の時間が全て表示されていた。そ
の数は全部で37人。先程の放送からなら、既に14人が死亡していることになる。
もっとも、今発動されている特殊ルールはこの端末には対応している筈が無い為、爆破対象者まで確認することは
出来なかったが。
ありがとうと言われて、端末機を返される。それを左手で受け取ると、右足の捻挫がズキンと痛んだ。

「あ、大丈夫? 無理して動かさない方がいいんだから」

あれから、小学校の保健室に入ると、まず間熊は気絶している砂田利子(女子8番)をベッドに寝かせた。その後、包
帯を取り出して、恵美の右足をがちがちに固定したのだ。今でも痛んでいるが、そんな弱気なことは言ってられない。
快斗に会わなくてはならないからだ。

「あの……間熊さんは」

「小夜子でいいよ」

「えっと……小夜子は、その拳銃が武器だったの?」

机の上に無造作に置かれているその拳銃、ジェリコ941を指差す。本当にそれは一目見て拳銃とわかるもので、こう
いっては何だが、恰好いいと思えた。

「そう、びっくりしたけどね。でも……それで」

それで、クラスメイトを殺した。
恐らく続きはこうなのだろう。黙ってしまった小夜子に、恵美は慌てて会話を振った。

「あの、ほら、さ。えーと……間熊さんは、これからどうしたいの?」

「これから?」

顔を上げ、再び眼が合う。その眼は、先程関本 茂(男子15番)を撃ち殺したときのように冷徹なものではなく、穏や
かな眼をしていた。殺気は微塵も感じない。

「そうだね、特にやることはない。積極的に殺し合いに参加する気はないし、だからといって何処か目立たないところ
に隠れ続けようと思ってもいない。なるようになるだけさ」

「ならさ……一緒に、快斗を探すの、手伝ってくれない?」

「快斗? あぁ、秋吉か。そういえば一緒じゃないんだね。どうしたんだい?」

恵美は話した。中学校の前で快斗と合流したこと。そして、行動を共にしたこと。友部元道(男子20番)に襲われて、
はぐれてしまってから、ずっと彼のことを探していること。
そして、その過程で……森 彩子(女子30番)を刺し殺したこと。

「つまり、あんたも爆破対象者じゃないんだね?」

さっきは湾条さんと呼んでいたのに、今はもう『あんた』になっていることに苦笑しながらも、うんと頷いた。
恥ずかしい話だけれども、森彩子を殺したのは今考えてみれば正当防衛なのだ。そうでなければ自身が殺されてい
た。そのお陰で爆破対象者ではないし、無理をして快斗を探す必要もなかった。
だけど、時間が経てば経つほど、快斗自身の命が危うくなっていくのだ。勿論、自身も。
一刻も早く、快斗を見つけ出さなければ、ならなかった。

「でも……その足でどうしろってんだい?」

「それは……」

「今は無理をしたらますます悪化するだけだよ。とりあえず、安静にしていなきゃならない。大体、あんたが死んだら元
も子もないじゃないか。命は大事にしなきゃ」

確かに、この足だとそう無理は出来ない。それが、最大の問題だった。
今はじっとするしかない。それしかないのだと思うと、悔しかった。だけど、そのうち。



 いつかは、快斗を見つけ出してみせる。
 そう、思って。




   【残り31人 / 爆破対象者22人】



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