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 G=3、森。西へ、西へと突き進んできたが、ここでどうやら行き止まりのようだ。
どう考えても、あの2人(いや、1人はさっき放送で呼ばれていたか。誰も殺していなかったからペナルティで殺された
んだと。なんとも愚かな奴だ)がここまで来たとは考えられなかった。特に、恐らく今も生き続けている湾条恵美(女子
34番)は足をびっこしていたような気がする。もしもあたしの勘が正しければ……湾条は足を怪我しているに違いな
い。それなのに、わざわざこのような地盤の悪い場所に来るだろうか。

 ……それは、ないか。

踵を返す。あまりこの場所には長居出来ない。先程この辺りに響き渡っていたマシンガンのような類の銃声。恐らく、
これまでにも何度かその音は聞いている筈だ。即ち、ジェノサイドの者の殺戮の旋律。その音が響けば、誰かの命が
奪われているのだろう。一切の容赦はなく、ただただ葬り去るだけの存在。その者も、きっと生き残らなければならな
い理由があるのだろう。



 ……そう、あたしが、人生をリセットしたいから。その為に、このゲームに乗ったように。



長谷美奈子(女子18番)は、右手に構える銃、ジェリコ941を握っているグリップが汗で濡れている事に気付いた。
いけない、これで手が滑ってしまうこともある。慌てて、スカートの裾で汗を拭い取った。
季節は冬だというのに、何故こんなにも汗が出ているのか。ふと、美奈子は冷や汗だと感じた。そして、ニヤリと唇を
ゆがめて笑みの形にする。
当然だ。あたしだって怖い。この、いつ死が訪れてもおかしくないこの状況が、非常に怖い。このジェリコだって、間熊
小夜子(女子25番)が生きていた時には彼女が使っていたものだ。あの女のことだ、きっとこの銃で幾人かの命を既
に奪っていたのだろう。そして、今度はあたしがそれを殺人に行使する番だ。
もし……さっきのマシンガンに遭遇したら、あたしはこの銃で応戦しなければならないのだ。逃げることなんて考えな
い。相手がこれ以上有利になる前に、今のうちに叩き潰しておかなければならないのだ。大丈夫だ、どんなに相手が
ピンピンしていたって、鉛の弾が一発額を貫通しただけで一気に殺せるのだ。確かにその代償として腕の一本や二
本は持っていかれるかもしれない。だけど、死ななければまだ生き延びるチャンスはあるのだ。


 ……絶対に、生き残る。そして、人生をリセットするんだ。


これ以上西に進むと禁止エリアだ。湾条はここまでは来ないだろう。あるいは、さっきの銃声はマシンガンが湾条を葬
り去った音なのか。考えられなくは無い。もしも湾条が襲われたのなら、ひとたまりも無いだろう。
そして、恐らくそのマシンガンは、間違いなくこの森に潜んでいる。今もまだ、次の獲物を探して辺りを徘徊しているに
違いない。考えろ、考えるんだ。あたしの武器はなんだ、銃と、ナイフが3本、暗殺用のワイヤー線と、そして……この
俊足だ。
思い出すんだ。今までに殺した奴ら、その時の状況をよく考えるんだ。
今までは、そう、あの望月道弘(男子32番)も、日高成二(男子28番)だって、隙を見て殺害したのだ。気配を消して
背後からこっそりと忍び寄って、一気に絞め殺す。それがあたしのスタンスじゃないか。湯本怜奈(女子32番)だって
同様に殺した。間熊も絞め殺した。もう、どうすれば絞殺出来るかなんて、感覚的にわかっているつもりだ。首を上に
持ち上げてしまえば、相手はもがいても何をすることも出来ない。勿論、反撃だって出来ない。銃を撃とうとしたって、
その動作をする前に首が落ちる。体力差があってもそれが可能なのは既に望月で実証済みだ。
マシンガンが誰であろうと、背後を取ればあたしは勝てる。その絶対がある限り、最後まで諦めるわけにはいかない
のだ。その為には、四肢が健全でないといけない。要するに無傷だ。それが出来ないから、不意打ちしかない。




  ……何処だ、何処にマシンガンは眠っている。




 五感を研ぎ澄ましてみる。森の中だ、動くとどんなに注意しても音はしてしまう。
 風に微ぐ草、凪ぐ木々。それらとは違った、明らかに人為的なその音が。





  ザザッ…………。





 それは、微かに聴こえた。
 本当に、少しだけ。


 はっとして、振り返る。完璧に取られていた、背後。
 そこに立つのは、マシンガンをこちらに向けて構えた、一人の男。



「唐津……?!」





 呟いた瞬間、その銃口から。

 火が、吹いた。






 唐津洋介(男子8番)の次の獲物は、どうやら……あたしらしい。






  【残り11人】





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