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  ぱぱぱぱ。


 今度は、別方向から銃声が聴こえた。
 向こうも馬鹿じゃない。位置を悟られないように絶えず移動して、あたしの姿を捉えようとしているのだ。


  バンッッ!!


 すかさず、そちらの方向に向けて銃を放つ。次の瞬間には、すぐに別の方向へと走る。
向こうの魂胆はまるわかりだ。あたしに撃たせて、こちらの所在を明らかにさせようとしているのだ。それを承知で、あ
たしはジェリコを撃った。唐津に、弾を浪費させる為に。狙うは、弾切れ。まぁ、向こうはマシンガンだ。弾は大量に所
持していると考えても間違いないだろう。


  ぱぱぱ、ぱぱぱぱ。


ほぅら、撃ってきた。無駄弾を撃てば撃つほど、あたしが勝つ確率は高くなっていくんだ。
マシンガンの音で、あたしが茂みを動き回る際に生じる音はかき消される。おまけに、同じ要領で唐津の位置をあた
しは知ることが出来る。
唐津に撃ちぬかれた部分が焼けるように痛かった。血が染み出して、触れる草花に血痕を残している。まぁ、まさか
こんな状態で、唐津が血痕を頼りにするとは思えない。ぎっ、と奥歯をかみ締める。


  ぱぱぱぱ……カシュ。


響いていた銃声が、消える。
その終わり間近の音の異変を、あたしは聞き逃さなかった。弾切れのように思えたが、違う。今のは、何かが突っか
かってしまったときの音だ。決して弾切れなんかじゃない。
茂みから顔をそっと覗かせる。やはりそうだ。唐津が、無様な姿を晒したまま、マシンガンを色々と見ている。その顔
は相変わらずのポーカーフェイスだが、手は正直だった。カタカタと震えていて、今にもマシンガンを落としそうだ。


  ―― あいつ……もしかして怖いのか?


唐津は、いつもクールだった。どんなことにも動じず、その凍てついた視線はいつも不動だった。
今だってそうだ。その顔は、いつも通りの唐津だ。だがどうだ? それ以外の部分は、まるでなっちゃいない。そう、ま
るで何かに取り付かれでもしたかのように、必死になっている。


 ……取り付かれる?
 まさか、あいつ……このゲームに本当は……。


はっ、と我に返る。
そんなことを考えている時じゃない。今は、あいつを倒すことだけを考えるんだ。

 茂みを一気に飛び出して、無様に立っている唐津に向けて、引き金を絞る。
 だが、その時にはもう、唐津は近くの木の幹に姿を隠してしまっていた。


  ―― くそ、余計なことを考えているんじゃなかった!!


 だが、再びこちらも姿を隠そうと思って、ふと異変に気付いた。
 唐津が、出てこないのだ。確かにまだ気配は残っている。あいつのことだ、逃げるという選択肢は無いだろう。


 なら、何故すぐにマシンガンで攻撃してこない?


 答えは簡単だ。マシンガンは、要するに今は使えない……つまり故障してしまったのだ。さっきの音は弾詰まりの
音、ジャムだ。援交で知り合った軍人から、その手の話はわんさか聞いている。そういった雑学知識では、少なくとも
あいつよりは優れている筈だ。ただの素人にジャムした銃を使えるように戻す知識があるとは思えなかった。なんて
ことはない、簡単な動作であるのに、だ。
そう……あいつからマシンガンが失われた以上、こちらの有利は絶対だった。



 ……さぁ唐津。出て来い。
 すぐに、殺してやる。






 もしも、唐津が本当は殺し合いに参加したくなかったのなら。
 どうして……あいつはこのゲームに乗る必要があったのだろうか。





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