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ただ黙々と、3人の男子は道沿いに歩いていた。
その中の1人、竹崎正則(4番)は、慎重に地図を見ながら、時計と見比べていた。時刻は9時20分を指してい
た。丁度D=8が禁止エリアになってから、20分。この時間差は危険だった。
「道沿いに行くと、この地図によると少しD=8に入り込んでる。何処かで道をはずれなきゃならないぞ」
軽く注意を促して、先頭の天道 剛(26番)に言う。彼の支給武器は回転六口径1028式という試作型の銃だ
が、銃に変わりはない為一番前にしている。
一方自分に支給された物は防弾チョッキだったために、一番後ろに配置していた。一番はずれだと思われる果
物ナイフを支給された種村 宏(7番)は、真中で脅えながら歩いていた。
そもそも、何故自分達が移動しているのかは、今から1時間ほど前に起こった、唐突の爆発音から始まった。
東へ300m程の場所で、何か建物が燃えていたのだ。
「なんだなんだ?!」
「……おい。向こうで、何か燃えているぜ」
「じっとしてろ……今は下手に騒がない方がいい」
慌てる2人を正則がなだめ、その木造の家からゆっくりと耳を澄ましていた。
その5分後、今度は先程とは比べ物にならないほどの大爆発音がして、全員が驚いていた。すぐそこで、誰か
と誰かが殺し合いをしている。
誰だ?
筒山光次郎(18番)を殺害した奴らなのか?
疑問は続いたが、下手に外を出ると……とにかく殺傷力が高い、あの武器は。下手にのこのこと出て行っても、
殺されるのが落ちだ。そう思って、やめておいた。
しかしそうもいかなかったのだ。大爆発音から15分後、今度は銃声が聞こえた。それもあの現場で、だ。
ここは戦闘が多発している。だったら、ここにはいない方がいいんじゃないのかと、初めて正則は感じた。
どうやら他の2人も同じことを考えていたらしい。すぐに出て行こうとする宏をなだめ、作戦会議っぽいものを開い
た。要は、何処へ逃げるかだ。
話し合った結果、会場の端に当たるA=9の灯台へ行こうと決まった。ここなら人がこなさそうであったし、何しろ
会場の端だ。そう簡単に逃げられるわけではないから、誰もいないと思えた。幸い近くには小学校があり、灯台
よりもそちらの方に集中するだろうと思えた。今から15分後に禁止エリアになる港周辺にいるクラスメイトも、そ
ちらの方へ移動してくれるだろうと踏んだ。
そして3人はゆっくりと扉を開けて、商店街では家の影から影へ、まばらな道では茂みから茂みへと、慎重に
かつ、素早く移動していった。11時には、E=7が禁止エリアに突入してしまうのだ。それまでには、抜けなけ
ればならなかった。それは一種制限時間つきのゲームのような、だが命懸けの勝負だった。
途中道端に常滑康樹(32番)の死体が転がっていた。腹部に一発、失血死だった。先程の銃声はきっとこれだ
ろうと、軽く黙祷を捧げてから先を急いだ。(勿論宏は叫び声を上げたのだが、幸い誰も気がつかなかったようだ
った)
「やっぱり、皆がやる気になってると考えたら、D=7付近が一番危ないと思うぜ」
天道が言った。
確かにそうだ。時刻は9時になっていて、当然港は禁止エリアになった。まさかクラスメイトがこんなものに引っ
掛かるとは思えなかったから、全員この周りのエリアにいるのだろう。となると、当然そいつらが出くわして、戦
闘状態になってもおかしくない。巻き込まれでもしたら大変だ。
エリアE=7に差し掛かった。相変わらず3人で茂みから茂みへ移動していたが、禁止エリアが近いということ
で、逐一止まってはエリアを確かめていた。どのみちこのエリアも午前11時を持って禁止エリアになるので、そ
んな悠長なことは言っていられなかったが。
あと少しで、エリアD=7に指しかかろうとしていたところで、突然先頭にいる天道が立ち止まった。
「どうしたんだよ? このまま北へ直進すればいいんだぞ?」
「待て……何か……、聞こえる」
その返事に少し戸惑った。誰かが近くにいるのか、と。現にこの位置からは小規模の港が見えた。どういうわけ
か船は一艘も止まっていなかったのだが。脱出防止か何かだろうか。
自分も耳を澄ましてみた。
「ぁぁ……ぃゃぁぁぁ!」
微かに、本当に微かだが聞こえた。誰かの悲鳴。それは西の方から聞こえた。
「俺……行ってみるよ」
そう天道は言った。
迷った。
ここで、自分達はその場所へ行っていいのだろうか?
なにか、とんでもないようなことがおきそうな気がした。本当に、困った。
「まてよ……平気なのか?」
「竹崎。今そこで、誰かが襲われているんだ。みすみす見殺しになんて、出来ない」
そう言うと、一気に西のほうへ走っていってしまった。
「待てよ! おい、天道!」
正則は慌てて後を追いかけた。宏もそれに続いて走ってくる。
だが。既に天道剛は、森の奥深くへと姿を消していた。
【残り26人】
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