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ただ、2人は走りつづけていた。後ろからは誰も追いかけてこないのに、ただ見えない敵が怖くて。
津崎修という殺人鬼が怖くて。
突然、塚本が力を無くして倒れた。
「塚本……! どうした……?!」
そして、言ってから気がついた。塚本の背中に、2発の銃痕があることに。そして、そこから多量の鮮やかな色
の血が流れ出していることに。
そして……塚本自身の呼吸が短く、荒いことに。
「おい! 塚本!」
「は……ざまぁねぇや……ここで、ゲームオーバーだよ」
ゲームオーバー?
何だよ、それ?! また……冗談なのか?
だが不思議なことに、塚本は笑っていた。それは、とても重傷のものとは思えなかった。
「折角……残り半分まで生き残ったのにさ……悔しいなぁ……」
「どういう、ことだよ?」
「俺、さ……このゲーム……楽しんでたんだよ。今まで黙っていたけど……」
その言葉を聞いた瞬間、良介の心の奥で、何かが崩れた。
楽しんでいた……だって?
「これはゲームだ。最悪のサバイバルゲームだ……だけどさ、ゲームじゃん? ゲームならゲームらしく……最
期まで楽しくやりたかったんだよ……。でも」
「でも?」
「くひひ……! もう駄目ダァ。俺、死んじゃうよ」
こいつ、狂ってるのか?
それとも……ただ、現実逃避しているのか???
そして、思い出した。塚本が団条を撲殺した時に、その顔に笑みを浮かべていたこと。それはつまり、その……
このゲームのなかの1つの選択肢の『殺す』を選んだだけじゃないのか、と。だから『選択/実行』しただけ。そ
う、これはゲームなのだ。きちんとしたルールがあるじゃないか。
でも。
「お前……笑い事じゃないだろ?! なぁ?」
これはたしかにゲームだ。史上最悪のゲームだ。生存権というものを奪い合う、史上最悪の椅子取りゲーム
だ。だけれども……このゲームでの負けとは、すなわち、死。死んじゃうんだぞ?!
なんで、笑っていられるんだ?!
「そうでもねぇよ。俺、楽しめたしさ。お気に入りの人と合流も出来たし、人殺しも出来たし……中々のスコアじゃ
ねぇの? そう思わねぇ? いいさ、俺は……楽しめた。もう、充分だ」
そして、体が急速に冷えていくことがわかった。自分自身が、震えてきた。
そんな……そんな!
僕は、塚本がいなかったら、とっくのうちに死んでた。これからも、塚本と一緒にいたいんだ。だから……先に逝
っちゃいやだ、そんなの、駄目なんだ。
「塚本……死ぬなよ……!」
「泣くなよ。お前は、悔しいけど俺よりも生き残れる。頑張って、いいスコアだせよ。じゃあな」
最期にまたくひひ……、と笑うと、塚本はゆっくりと目を閉じた。
そして、もう2度と塚本が目を覚ますことは無かった。
「何がゲームだ! このバカ野郎……!」
もう聞こえないのに、良介は罵声を浴びせた。そうでもしないと、泣きそうだったから。
同時に、津崎修に撃たれた左二の腕が再び痛み出して、急いで止血しなければと思った。
だが。
「動くな」
森の中で響く声。
振り返ると、立川朋彦(5番)が、そこに立っていた。
そして彼は、拳銃を握っていた。
塚本。僕ももう、退場かもしれない。
13番 塚本 大作 死亡
【残り20人】
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