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 雨がただ降り続く中、照屋宗治(25番)は彷徨いつづけていた。
先程飛田に出会って、一旦は足を止めたものの、今はただ行く当てもなく、ふらついていた。

「もう、何がなんだかわからないよ……俺……どうしたらいいんだ?」

彼は精神的にも肉体的にも参っていた。
もともと体力のあるほうではなく、いつも体育の成績は2や1。当然足も決して速い方ではなく、むしろクラスでビ リを争っていたほどだった。


 だから彼は驚いたのだ。


突然目の前に見開かれた平原があり、そこに1人の男がいたから。

「あ……あひ……」

そして再び堂本文男(29番)の無気味に笑ったあの笑みを思い出し、彼は逃げようとしても逃げられないことを 悟った。あろうことか、腰が抜けてしまったのだ。


 誰か、助けて……!


その人物はこちらに気がついたようで、立ち上がるとこちらの方へ歩いてきた。その人物、九十九大輔(15番) は支給武器であろう、ブッシュナイフを握り締めて、自分の前に立った。



 助け……!



「……くそっ」

唐突に大輔がそう吐くと、くるりと後ろを向いてしまった。
この時大輔は目の前に現れた照屋を殺そうと考えていたのだが、彼自身が躊躇し、してはいけないという結論 に達したのだが、彼に知る由も無い。

「こ……殺さないのか?」

「殺したいさ……でも、体が拒絶する。やっぱり過去には勝てないな」

「かか過去?」

「ああ……目の前でさ、通り魔事件がおきたんだ。勿論目撃した僕も襲われた。でも、逃げ切ったんだ。交番の 前を通ってね、犯人は即射殺。この国らしいよ」


 なに過去の話をしているのだろうか?
 そうすることでなにかメリットがあるのか?


「その時に2つも死体を見ちゃってね。それ以来血を見るのが怖いんだよ。教室で嘔吐したの、俺だったんだ。臭 かったろ?」

それは僅か12時間前の話。
だが、この状況においてそれは紛れも無く、『昔』だった。

「じゃあ苦しめないように殺してやろうか?」

突然、2人以外の声が聞こえた。振り向くと、2人の男がそこに立っていた。
それは紛れも無く同盟を結んだ最強のメンバー、堤 洋平(17番)と綱嶋裕太(19番)だった。



【残り15人】




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