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手にした探知機に、ぽっと黄色い★印が表示された。
その印は凄い勢いで移動していて、画面端から端まで行き、そして消えた。
寺井晴行(24番)は、その印がなんとなく誰だかわかっていた。こんな無謀な奴は、多分1人しかいない。自分
達のリーダー、徳永泰志(31番)だ。
先程、単発だが銃声が聴こえた(実際はマシンガンは彼にしか支給されていなかったのだが、彼はそのことを
知るはずが無かった)。その銃声の方面から走ってきたということは、その誰かが誰かを襲ったことになる。
でも、泰志だけは自分の手で殺したくないんだ。
自分の尊敬する人物だから。
そもそも仲間を最初に殺すこと自体、遂行してから気分が凄く悪くなった。当たり前だ、仲間を殺すことが簡単に
できるほど、自分は落ちぶれていない。別に他の奴は平気だけど。
1人でいた孤独感の強い戸塚正太郎(34番)を殺すことに躊躇はしなかった。彼は自己中心的な人物で、まえ
まえから気に入らなかった人物の1人だった。
だが、出川 真(22番)が自分を殺してくれと言ったときは正直驚いた。あの時はついついしゃべってしまった
が、勿論泰志と最後の2人になってしまった場合、自分は容赦なく泰志を殺すだろう。だが、できることなら、そ
れだけはどうしてもしたくなかった。
その仕草が、常に何かをひきつけている泰志。別に好きなわけではないが、正直尊敬していた。自分には無
い、あいつの持っている何か。
再び探知機に印が表示された。その印は全く動かない。
つまり、死体の可能性が高い。足音を消して、そっと近寄ってみた。
誰かが倒れていた。そのよくわからない腹の辺りで両手が組まれている。つまりは、死体なのだろう。既にこの
島には30人近くの死体が転がっているはずだ。別に出会っても驚く事ではない。
そして、その顔を見て、それが時津 優(30番)だと分かった。
「時津……」
彼は宗教信念が強いから云々といって、決してグループに入ろうとはしなかった。だが、グループのものでなく
てもよく話をしたし、みんなとも仲が良かった。
その時津が、死んでいた。放送が終わってから、まだ1時間も経っていないのに、だ。
探知機を見ると、また別のものも映し出されていた。同じように動いていない。死体に違いない。
豊田敬一(40番)だった。
これで、多くても残り11人。なるほどなるほど……やる気になっているお方が多いようで。
足で何かを蹴った。それを拾って見る。
「これは……携帯?」
白い携帯。見慣れた銀のストラップ。
電池シートには『TOKUNAGA』という文字が貼られていた。
「泰志……!」
ククク……と笑いが込み上げてきた。
なるほど……面白い。
そうかそうか、泰志、お前もゲームに乗ったわけだ。
俺がグループを壊滅状態にした事を教えたら、あいつはどうなるだろうか?
怒り狂って俺を殺しに来るだろうか?
死ぬなよ、泰志。
お前は最後のデザートに、取っておいてやる。
【残り11人】
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