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 彼の名前を絶叫して、無我夢中で洋平は津崎の前に飛び出た。
津崎はすぐに自分に気がついてその銃、ベレッタM92Fを発砲してきたが、所詮素人。弾は見当違いの方向へ 飛んでいき、勿論洋平には当たらなかった。

「この野郎ぉ! くたばれぇっ!!」



 パンッ! パンッ!



最早綱嶋の忠告など気にせずに、洋平は2発続けて撃った。

1発目が津崎の肩口に当たり、津崎の体が半回転した。続いて2発目が津崎の頭を横から打ち抜き、反対側 から血の花が舞った。その一連の銃を撃つ仕草も、見事としか言いようが無かった。
直後津崎は側方面に倒れた。まだピクピク痙攣している。


 パァン!


洋平はそれを冷酷に見下しながら、頭に向けて1発撃った。
津崎の頭がガクンと揺れて、今度こそ動かなくなった。

「馬鹿……野郎……!」

後ろからうめく声が聞こえて、洋平はそちらを向いた。
綱嶋が、苦しそうに息を吐きながらも、洋平を睨んでいた。その睨みようは凄く、一瞬息が止まったほどだ。

「綱嶋……大丈夫か?!」

「右足……大腿骨を砕かれた。もう一生歩けないな。感覚が無い」

みると、膝小僧のあたりに穴が空いていて、骨は砕け、そして見事に毒々しい色の血が流れでていた。
これでは、戦闘はおろか、もう連れて行くことも出来ないかもしれない。でも……
自分はそれでも綱嶋を連れて行こうと思った。別に止血さえすれば、命に別状があるわけではない。

「お前……まさか俺を連れて行こうとか思っているんじゃないだろうな?」

思っていたことを唐突に綱嶋が口にしたので、一瞬洋平は驚いた。

「あ……あぁ、そのつもりだ。命に別状は無いんだろう?」

「馬鹿野郎……俺はもうここでゲームオーバーなんだよ、お前の足手まといになる。さっさと楽にしてくれ」

「楽に……?」

一瞬の沈黙。洋平は綱嶋が何を言っているのかが分からなかった。


 楽にするって、一体どういうことだ?


思い当たる節は一つだけある。だが、それは選んではいけない答えだ。

「わからないのか、意味が……? 俺を撃て。そして生きろ、強くな」

「な?! どういうことだよ?!」

だが綱嶋は、その最悪な答えを選んでいた。それもあっさりと自分の口からそれを述べたのだ。

「言ったとおりだ。俺を殺して、これからはお前1人で行け」

「嫌だ! そんなの……許されるはずがねぇだろ!」

だが洋平は気付いた。綱嶋の顔が驚くほど冷静になっているのを。

「俺は気付いてたよ。いつか俺がお前を殺すんじゃないかって思ってたろ? ま、場合によっちゃぁその可能性 もあったわけだ」

「場合って……」

「俺は考えていた。最後まで2人で生き残った場合、その時は正々堂々戦おうと。だが、どちらか一方がもう戦 闘不能なくらいに……つまり相棒の荷物になるような怪我をした時は、殺してしまおうと……だからな、お前が 怪我をしたら、俺は容赦なく、お前を殺すつもりだった。だが今は逆だな」



 そんな……! 綱嶋は、そこまで……!

 でも、そんなこと、出来ない!



「ほら、早く殺せよ。じゃないと……」

綱嶋の手が動き、苦無を握り締めていた。

「俺がお前を殺すぞ?」

同時に、体が反射的に動いてしまった。撃つ意思など、全く無かったというのに。

「うわぁぁぁあああっっっ!!!」


 パァン!


思わずその言葉に引き金を引き、気がつけばそこには綱嶋の死体が転がっていた。見事だった、自分を精神的 に追い詰め、自分を殺害させる。まったく、この綱嶋という男は見事としか言いようが無かった。

「この……大バカ野郎! くそっ……バカ野郎……!」

そして、初めて洋平は綱嶋を否定した。
勿論その対象人物はとっくにあの世へ旅立っていたわけだが。



  16番 津崎 修
  19番 綱嶋 裕太  死亡



【残り7人】





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