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 あっ、と思ったときは……もう、遅かったんだ。
 僕は人生で最大の後悔を、した。


「なんで……だよ?」

一人の女子生徒が倒れている。その前に、涙をこぼしている男子生徒がいる。
友部元道(男子20番)は、その場に崩れ落ちた。右手から、ブローニング・ハイパワーが地面に落ちた。

「どうして、お前なんだよ……!」

目の前に倒れている増永弥生(女子27番)。その腹部からは、今も尚紅い血が流れ続けていた。いや、正確にはわ
からない。だが、月光にかざされている彼女の体から、多分、それは、そう。



 何故自分は人を殺そうとしていたのか。

 どうしてやる気になってしまったのか。



 あれだけ、クラスメイトを殺そうとしていたのに。



「弥生……!」


あの時、決心した時。自分は、親友に裏切られた。
だから決めたんだ。たとえ相手が無抵抗であろうと、それが彼女であろうと、容赦はしないと。
でも、わかった。



 心の奥底では、彼女は……増永弥生だけは、殺したくなかったのだと。

 撃ってから、初めてわかった自分の本心。



「……モチ君」

目の前に横たわっていた彼女が、虚ろな目を闇夜に向けていた。
きっと、もう何も見えていないのだろう。焦点が合っていない。

「……弥生」

そんな中、彼女は自分の名を呼んだ。自分が嫌っていた、でも本当は言われるたびに嬉しかった、そのヘンテコなあ
だ名。その名を、呼んだ。
そして、彼女はそっと目を閉じた。

「……弥生!!」

必死に揺さぶった。だけど、もう力も何も入っていない。だらんと掴んだ腕が曲がっている。
そして、悟ったんだ。





 僕が、殺してしまったんだと。





 あんなにも望んでいたのに。

 あんなにもやる気だったのに。





 初めて殺してしまったのは、一番殺したくなかった人物。



「弥生……弥生……」



 涙が溢れてきた。何を考えていたのだろうか。腹部の傷口に、必死に流れ出る血を注ぎ込んでいた。

 だけど、それでも血は止まらなくて、何をすればいいのかわからなくて。



「ふふ……ふははは……!」



 だから、壊れるしかなかったんだ。

 精神を崩壊させる以外、僕に選択肢はなかったんだ。



 もう、人殺しとして、僕は突き進むしかないのだ。

 全員、皆殺しにするしかないんだと。



「祝砲だ……僕と弥生の、祝砲だ!」





 もう、完全に壊れていた。

 僕は、彼女のデイパックの中に入っていたクラッカーボールを、思いっきり叩き付けた。



 パンッ……と、小気味良い音がした。

 これが僕と、弥生の、契り。



 せめてもの、償い。





 女子27番  増永 弥生  死亡







   【残り48人】



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