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「ねーねー、蒔田君。ちょっと思ったんだけど、聞いていいかな?」
門並増美(担任)は、今回色々と教えてくれる教官補佐の蒔田信次兵士に、少し聞いた。
「はい。なんでしょうか?」
もともとタメであったため(シャレではない)、すぐに打ち解けることができた。
こんなに話せる相手は本当に久々な気もする。妹の麗が死んでから、ずっと閉鎖的だったからだ。
「私、始めて教官ってものをやってみたんだけれど、普通はこんなに進行が早いものなの?」
兵士蒔田は少し考えた後、反対側の椅子に座って話した。
「えーとですね……僕もまだ兵士やってから1年と少しですからね。でもまぁ……早い方じゃないんですか?」
「22番! 死亡確認!」
唐突にモニタールームに声が響き渡った。増美はレポート用紙を片手に今宣言した兵士のところへ行き、二
言三言会話をすると、また席に戻ってきて、ペンを持って書き始めた。
「いいわよ、続けて」
「あ、はい。これで、残り何人ですか?」
「23人」
即答したので、蒔田は少し感心したようだった。
「まだ2回目の放送も入れていないのに、このペースは結構早いかと思いますね」
「へぇー。そういうものなんだ、このペースだと……まぁ夜には終わりそうだね」
「いや……それがそうじゃないんですよ。人数が少なくなった途端進行が伸び悩むケースもありますから。ところ
で、門並センセ、気になっている生徒って、います?」
そんなことをいうものだから、増美は一旦ペンを止めて、考えた。
「やっぱり徳永君と寺井君かな。この2人が遭遇した時、どんなことがおきるのかちょっと興味あるよ。どちらも
拳銃を持っているみたいだし。あとは、堤君と綱島君。やる気になっているのはいいけど、残り人数が少なくな
ってきたらどうするのかしらね」
すると、モニターのほうを見ていた蒔田がおっ、と声をあげて言った。
「おや? 堤達の進行方向に、殿村がいますね。殺りますかね?」
増美もモニターを見て、薄く笑みを浮かべて言った。
「殺るわね。でも、普通に殺すとは思えない。絶対に罠か何かを仕掛けるわよ。そう、彼等は利用できるものは
何でも利用する人だから」
「へぇ……で、門並センセはトトカルチョってやってるんですか?」
「賭け事はあまり好きじゃないんだけど……。妹のことも、あるしね」
その言葉を発した途端、増美は自らの手で殺した外都川を思い出した。あんな兄を持って不幸だな、と。
兄がおとなしく妹に殺されていたのなら、手西も、そして富山も死なずに済んだのにね。
「すみません、変なこと聞いちゃって」
「いや、いいのよ。上司には逆らえないから、実は私も試しに賭けたのよ。寺井君に」
「寺井、ですか……まぁトトカルチョ4位ですからね。果たして彼は堤達を倒せますかね?」
「綱島君をどうにかすれば、平気だと思う。支給武器もマシンガンだったしね」
すると、蒔田は苦笑しながら言った。
「仕組みました?」
「いーえ、全然。凄い偶然よね……さて、できたっと」
増美は書き終えたレポートを見て、蒔田に差し出した。蒔田はそれをファイリングし、黙読していた。
男子32番 常滑 康樹
支給武器:手錠
被害者 :戸田鉄平(男子33番)
加害者 :徳永泰志(男子31番)
死因 :腹部被弾
補足 :出発後、戸田鉄平を分校前に手錠で拘束し、禁止エリア滞在状態で首輪を爆破、
殺害。その後民家にて鰻刺しを調達、G=5で徳永泰志に襲い掛かるが、
反撃され射殺される。
男子21番 鶴岡 雅史
支給武器:皮製のムチ
被害者 :なし
加害者 :団条大樹(男子9番)
死因 :失血死
補足 :E=7地点にて突然団条大樹に突然襲われる。腹部を刺され、肺に穴が空いた
状態に。途中天道剛に助けられるが、大量出血により失血死する。
男子9番 団条 大樹
支給武器:両刃ナイフ
被害者 :鶴岡雅史(男子21番)
加害者 :塚本大作(男子13番)
死因 :撲殺
補足 :E=7にて鶴岡雅史を襲撃するも、その場に居合わせた天道剛に小指を狙撃され
逃走。その後、遭遇した棚瀬良介を油断させ襲いかかるが、共に行動していた
塚本大作に後ろから拳大の石で殴打、撲殺される。殺人願望があった。
男子22番 出川 真
支給武器:金属バット
被害者 :なし
加害者 :寺井晴行(男子24番)
死因 :頭部被弾
補足 :E=7の民家に隠れつづけていたところを寺井晴行によって見つけられる。
自殺願望が高かったらしく、自らを射殺するように言い、死亡。
昔通り魔にあっていた。
そして新たに4人死亡して、残り23人。次の放送まではあと約30分。
それまでに、再び死者はでるのだろうか?
【残り23人】
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