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 棚瀬良介(6番)は、今はゆっくりと寝そべり、休んでいた。

残り22人。この中にやる気になっている人物は、必ずいる。最後に生き残れるのは、たった1人だけなのだか ら。
多分、皆だって生き残りたいはずだもんね。絶対に生き残りたい、そういう奴の中に、やる気になっている奴は いるんだ。そう、団条大樹(9番)のように。

ふと、隣を向いてみた。同じように、ペアを組んだ塚本大作(13番)が寝そべっていた。



 よくこいつと、ペアが組めたなぁ……



良介はふと思って、出会った時のことを思い浮かべた。




 彼、良介は分校から出発した後、近くの、地図でいうH=3の民家に隠れていた。
良介は周りから見てもわかるように体力が無く、また穏和な性格で知れていた。決して争いごとを好まず、特に 親しい友好関係も持たない、だが1匹狼ということではなく、普通の話し相手がいるだけだったが、まぁクラスで の評判はよかった。
自分がどんなに頑張っても勝てないのに、小学生にカツアゲをしていた堤 洋平(17番)に立ち向かい、自らが 犠牲になったこともあった。それから何故か堤は良介のことを気にかけるようになり、また決して良介の目の前 ではカツアゲをすることはなかった(まぁ自分の目の前では、だ)。
理由は知らない。でも、きっと良介には何か惹かれるものを感じていたのだ、とクラスメイトは考えていた。だが そのことを良介自身は知らない。
影の人気者、とでも言うべきなのか。良介はそんなことを気に留めることも無く、ただ平穏に毎日を暮らしてい た。
だからこんなプログラムに巻き込まれても、彼は最後まで自分でいようと考えていたのだ。争い事はしたくな い。それだったら、自分から喜んで死ぬ。幸い自分に支給された武器は暗視スコープだったし、これなら自分が 襲われた時に咄嗟に相手を殺してしまうことも無いだろう。

正直、死ぬのは怖かった。でも、みんないつかは死ぬんだから、今死んでも、いつ死んでも同じなんだから。

そしてH=3の家に留まっていた時、突然争いの声が聞こえた。その時はじっとしていたのだが、静かになった ので外へ出てみると、月島厚志(14番)が刃物か何か、とにかく鋭利な物で無残にも斬殺されていた。足と首 がもげていて、刹那吐きそうになったが、こらえておいた。なるべく、クラスメイトとはかかわりあいたくない。
他にも騒ぎを聞いた者が現れるかもしれないと、良介は街道沿いに走った。そして、F=7に差し掛かったところ で、唐突に放送が流れはじめたのだ。

放送の内容は凄まじかった。たった1時間弱の間に、既に11人ものクラスメイトが死んでいたのだ。


 やっぱり、皆、生き残りたいんだな……。


良介は改めて確信し、月島厚志の死に様を思い出した。まるで恐怖に脅えきった顔。たしか彼は虐待されてい たとか言ってたっけ? こんな簡単に死んじゃうなんて、嫌な人生だったね。

とにかく、放送でこの先のE=7には行けなくなったので、F=7に位置するこの家に入ることを決めたのだ。


 ところが。



「動くな」

突然声をかけられて、良介は振り返った。
そこには、まぁあまり話し掛けた事はなかったが、通学路が近いことからいつも互いの事を認識しあっていた人 物、塚本大作がいたのだった。
てっきり銃か何かを持っているものだと感じたのだが、彼は指で鉄砲をかたどって突っ立っていた。

 よくわからない。

「塚本……か。僕を殺すの?」

「ばーか。棚瀬、お前だから声かけたんだよ」

 はぁ? と一瞬思ったのだが、塚本の考えていることはすぐにわかった。

「合流したいの?」

「ん? ま、まぁな……ほら、俺の武器、はずれだから、気にしなくていいよ」

そう言って、塚本は懐から双眼鏡を取り出した。なんだ、似たような武器だね。

「僕の武器は暗視スコープ、日中は使えないけれど、いいのかい?」

「そんなこと関係ないって、とにかく、一緒にいて欲しい。……いいか?」

良介は、少し笑んで言った。

「勿論」

別に塚本と特別親しかったわけではない。でも、何故か合流してしまった。そして、自分が団条大樹に襲われ た時も、助けてくれた。本来このゲームは他人を殺せば殺すほど自分が生き残る確率は高くなるはずなのに。

 彼は、なんで自分なんかと、合流してくれたのだろうか。



【残り22人】




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