… あとがき 



 初めて、あとがきというものを書いてます。
ここでは私がこの作品『連動』を通じて感じて欲しかったことなどをつらつらと書き並べていきます。
興味がない方などは、別に読み飛ばしても構いません。

この『連動』のテーマは、絶望、裏切り、そして死の恐怖です。
プログラムという、まず助からない(死が待っている)極限の状況で、生徒達がとる行動。助からないと絶望感に捉わ
れる者。なんとかなるさと無理矢理楽観的に思い込もうとする者。そして、生きる為にもがく者。
生徒達はあらゆる手を使って、友人を殺していく。裏切り、謀り、そして罵り。ある者は狂気に捉われ。

生徒一人ひとりの思い入れもありました。
それでは、本編ではそんなに伝えられなかった内面を、一人ずつ語ります。


 男子1番  加藤秀樹

彼は、やる気でした。でも、殺す勇気はありませんでした。
強い者に挑めば、自分は弱いから必ずやられる。簡単に諦める愚か者です。だから、信用出来る親友なら簡単に殺
せるという安直な考えに辿り着いたのです。
そして、殺してから後悔しています。やってから後悔する、愚か者です。きっと生きていても、やっぱりやらなければよ
かったと思い続ける日々を送っていたでしょう。大切な者の価値は、失ってからでないと解らないのです。


 女子1番  大沢尚子

自己中心的主義の典型者です。彼女は、自分さえ良ければいいのです。
だから、ペアの加藤の事なんか何にも考えていなかった。何かあったら、それから考える、適当人です。そのくせ、他
人事には野次馬本能で覗き見をする、どうしようもない癖を持っています。ただ、興味を持った者は追い続け、興味の
ない者はバッサリと切り捨てる。まさに、他人の気持ちを考えず、自分のことしか考えていないのです。
何かあってからじゃ遅いんですよ。


 男子2番  熊田健人

本作の中では、まだマシな人物でした。純粋に、やる気になってます。
確かに学校内では素行が悪いと言われていましたが、弱い者いじめは大嫌いな、常識をわきまえた人物です。
誰かがやる気にならないといけないんだと、本作では4番ペアを狙っていました。結果的には失敗してしまいました
が、仕方なくやる気になったという印象があります。
最も、それがただのいい訳なのかどうかまでは、作者である私にもわかりません。


 女子2番  高橋 恵

馬鹿です。後のことを考えずに、その時の感情に任せて暴走するタイプです。きっと、普段の生活でも思ったことをす
ぐに口に出してしまうような生徒でしょう。彼女に対して好印象を抱いていた者は、実はいなかったのではないか、そ
う感じます。だから小学校の時だって、いじめられたのです。孤独でいたからじゃない。彼女が、そういう性格だから
友達が出来なかった、それだけだったのです。
そんな彼女でさえ救ってくれた熊田を、彼女は愚かな行為で殺してしまいました。


 男子3番  篠塚晴輝

彼は、出発前に兵士の小銃を奪ってなんとか状況を改善しようと努力しました。
それを行動に移すには、相当な勇気が必要だったのでしょう。だけど、それは無謀です。勇気ではありません。結局
みんなに迷惑をかけただけなのです。この時はまだ連動制度を知っていませんでしたし、それは仕方ないとします。
彼は行動派でした。だから学級委員もそつなくこなすことが出来たのです。しかし、行動する前に、それが果たして可
能なことなのかどうか、よく考えてもらいたいものです。やらなきゃわからない? 甘えるな、迷惑だ。


 女子3番  原田真奈

彼女は、遅刻魔です。本来ならばプログラムのあった日は大切な行事の日でした。だけど、それにも関わらず、彼女
は当たり前のように遅刻しています。目覚ましが壊れていたからなんて、ただのいい訳なのです。社会でそれが通用
するとは思えません。最低限のことが守れない人間は、いつも肝心な所でミスしやすいです。
今回は偶然連動制度によって出発前に死亡という形になってしまいましたが、実際、プログラムに参加していても、
つまらないところでミスをして、呆気なく死んでしまったでしょう。


 男子4番  東雲泰史

彼は、一言で言えば優しい人間でした。優しいから彼女の松岡とも仲良くやってこれたし、またそれがわざとではなく
自然な行為だったから、偽善とも言われずに、クラスのみんなに慕われてきたのです。
だけど、時と場合を考えなさ過ぎでした。あのような絶望の中に放り込まれても、最期までみんなを信用しようと思っ
ていました。相手が何を考えているのかわからないまま、自分の優しさだけで突き通そうとしても、社会では通用しな
いでしょう。裏切られたときのショックも大きいのですから。案外、こういう人は、簡単に自殺します。


 女子4番  松岡圭子

本編では、とりあえず定義するならジェノサイドでしょう。ただ、彼女は東雲をそれだけ慕っていたのです。それだけ好
きだったのです。だから彼を守る為なら、クラスメイトも手にかけることが出来たのです。だけど、途中からそれは、殺
人を正当化するためのいい訳になってしまいました。大切な彼を失ったことで、そして絶望感に苛まれて、発狂してし
まいました。しかしそれは、仕方のないことだと思います。特に、あの状況下では。
最期、彼女は全員に嬲り殺しにされました。彼女は、運が悪すぎました。特に、支給武器に関しては。


 男子5番  西野直希

大胆な男となっています。まず、目標を明確に立てて、それを遂行する為にどのような行動をとるのが一番なのかを
的確に判断し、そして最善の行動をとっています。ここまでは、かなりいい人物だといえます。
ですが、彼は信用しなさ過ぎでした。ペアでさえ、信用していません。最後には少し吉田を信用していますが、それで
は遅すぎました。もう少し、早く信用していれば、結果は変わったかもしれません。
最後に。彼は、やる気でした。殺害数はゼロですが、私は、彼をジェノと呼びたいです。


 女子5番  吉田由美

親友の原田を見捨てたことに、酷く後悔しています。しかし彼女は精神的に強いです。過去を振り返っても何も変わら
ないと開き直り、生き残る為に最善の方法をとろうと努力しました。そして、最後には戦いにまで参加し、そしてそれ
なりの功績をたたき出しています。彼女も、熊田並みにマシな人物でした。悩み、苦しんだ末に、答えを見つけ出して
ます。もしもプログラムに巻き込まれていなかったら、立派な大人になっていたでしょう。そんな彼女が、呆気なく死ん
でしまったのは、運が悪かったとしか言えません。


 男子6番  三島幸正

彼は、自分がわかっていません。自分が何をすればいいのか、どうすればいいのかが、自分のことなのにわかって
いません。行き当たりばったりの行動を繰り返し、その場しのぎを繰り返す。確かにその場面ではいいかもしれませ
んが、後先考えない行動は社会では通用しないでしょう。
確かに彼は、最期までよく戦いました。どんな手を使ってでも、お前を殺してやる。こういう目標があったから、普段以
上の力が働いたのでしょう。目標があれば、人間は強くなれるのです。


 男子7番  森川 勇

死を恐れた彼は、自由を求めていました。勉強に縛り付けられた自分という器から、脱出したいと考えていました。そ
して、ペアの裏切りに怯えていました。総合的に判断して、ここは三島を殺すのが正解だと判断し、そしてそれを実行
に移そうとして、敗れました。彼の行いが間違っていたとはいえません。だけど、正しいとも思えません。何故なら、
彼は自分の利益しか考えていなかったからです。少しのリスクを犯すことに臆していたら、きっと、取り返しの付かな
いことになるでしょう。だから強かったのに、躊躇して、そして三島に敗れたのです。


最後に、担任の佐藤敏夫先生。
彼はプログラム会場に来ています。そして、上記のような生徒の行動を全てモニターを通じて観ています。
全てを終えて、彼はどういった行動をとったのでしょうか。あえて本編では語りませんでしたが、それはみなさんの判
断に委ねます。もしかしたら、普通に泣いて帰ったのかもしれません。もしかしたら、口封じに政府の人に殺されたの
かもしれません。もしかしたら、悲しくて自殺したのかもしれません。さて、もしも貴方なら、どうしますか?
……同じなんですよ。この小説を読むということは、傍観者の一人に過ぎないと。佐藤先生と、状況は一緒なのだと。


さて、あとがきはこのあたりにします。
とりあえず本編ではとても書けないような生徒への思い入れも全て(とは言えませんが)書けましたし、私は満足して
います。この作品には、希望といったものは何も書かれていないのです。喜びもありませんし、怒りもそれは虚無的
なものです。哀しみはある程度ありますが、楽しみなんて、言語道断。
何も、籠められていないのです。何かが足りないとすれば、それは生でしょうか。死ぬことの恐怖ばかりで、実際に生
き残っても何をすればいいのかわかっていません。だから、死しか見えないのです。生は見えないのです。

どうですか?
こんな小説じゃ、駄目なんでしょうか?



それでは、また、いつの日か。



 Prev / Next / Top