第四章 最後の一組 − 14


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 ブローニング・ハイパワーが火を噴いた。
 その銃弾は平山正志の頭部を捕らえて、そしてその命をもぎ取った。

「嘘だろ……」

 そう呟いて、立ち上がった。そのまま歩みを進め、崩れているブロック塀に手をかける。脆くなったそこから、破片が
パラパラと、崩れ落ちていた。砂のようにそれは細かく、その奥から金色をした銃弾が突き刺さっている。
後ろを振り返ると、わずか数メートルのそこに、殺人鬼はいた。前田綾香の命を奪い、そして吉村美香の命も奪い、
今は平山正志を撃ち殺した、極悪犯だ。その殺人鬼は、平山正志からくらった一発の銃弾を左肩に受けて、倒れて
いた。その場所から刻一刻と血が流れ出ていて、早く止血しなければ危険なのだということを暗示していた。

 ハァ、ハァ、と苦しそうな声を上げている殺人鬼。もう、この会場には、自分と最愛の親友、そして、こいつしかいな
い。
腰に挿しておいたナイフを取り出す。こいつを殺せば、悪魔は全て終わる。もう、こんな殺し合いなんか、しなくて済む
んだ。動機は、それで充分な筈。

 ハァ、ハァ、とまだ声を上げている殺人鬼の上に、立つ。もう引き金を引く力も残っていないのか、拳銃を持つ手が震
えているだけだった。
悔しかった。こんな奴に負けたのか、と。こんな奴にクラスメイトは次々と殺されてしまっていたのか、と。そう思うと、
怒りが込み上げてくる。

 そのナイフは、情けないほどに小さかった。だが、そのナイフが、この殺人鬼の命を奪うのだ。どうだ、悔しいだろう。




  さて、そろそろ時間だ。




 高松昭平(男子五番)は、喉元にナイフを一気に突き刺した。




  女子二番  栗田 真帆    死亡



   【残り2人】






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