その光景を、全て僕は見ていた。 何度も、抵抗しない仙道美香をバットで殴り続ける、土門英幸の姿を。 僕の、せいだ。 僕が、仙道の左目を傷つけたから。 僕が、仙道を殺したんだ。 土門英幸が仙道美香に勝てるはずがないのだ。 あいつは弱くて、だけどズルくて。卑怯な手で、勝った。 だけど、きっかけを作り出したのは僕。 紛れも無く、僕。 僕が、殺した。 僕が、殺してしまった。 黙っていればばれない。 知っているのは僕と仙道だけ。そして仙道は死んだ。 僕が言わなければ、誰にもばれない。絶対に、ばれない。 僕が加担しただなんて、彼女になんか知られたくない。 彼女に知られるくらいなら、いっそすがすがしく死んでやる。 僕はもう、以前のような奴じゃない。 僕はもう、生まれ変わったのだから。 そして。 土門英幸を許すわけにはいかない。 死体になっても、あそこまで酷い仕打ちが出来る奴はそういない。 まさに、卑怯。まさに、鬼畜。 決して、生かすものか。お前だけは、生かして帰すものか。 土門は仙道の死体を殴り続けている。 こちらに気付く様子の欠片もない。 やるなら、今しかない。 僕は、バッグの中から小型のバッヂのようなものを取り出す。 そして、それを土門の放置した荷物の中に、そっと入れる。 急いで戻ってきた。またバッグの中から、端末機を取り出して、その電源を入れる。 広大な敷地が表示されて、その上に緑のマークと黄色のマークが、近い位置にポツンと表示されている。 発信機。 端末機は現在地と発信機のある場所を指し示している。 これで、僕は常に土門がどこにいるかわかる。 この端末機が、土門の居場所を晒し出してくれる。 土門。 お前はもう、生きて帰ることは出来ない。 お前は、俺が殺してやる。 俺が、きっかけをつくってやる。 土門。 お前は、最低な奴だ。 ……さよなら、土門。 地獄でも、二度とその面、見せんなよ。 【残り26人】
|