気が付いたときには、引き金を絞ってしまった。 頭が、かーっと熱くなって……そして、悔しくて。 「遠藤!!」 悟は、マシンガンをほっぽり出して保美へと駆け寄った。放たれた弾は全部で6発。全て、保美の体に命中した。 崩れ落ちた保美は、まだ意識があったものの、それも残り少ないということは、目に見えてわかった。 「大丈夫か、遠藤!」 「与木君……」 うっすらと目を開けて、保美は笑っていた。内臓器官はぐちゃぐちゃに破裂している。悟は保美を探している間にも、 様々な死体を見てきたが、ここまで酷いものはなかった。 足元が、崩れていく。体の心から、冷えていく。 「遠藤……すまない……」 「与木君……ゴメンネ……」 謝っても済まない事だ。見る見るうちに、保美の顔が白くなっていく。血の気が、失せているのだ。 そう、俺が……撃ったのだ。保美をこの手で、撃ち抜いたのだ。 「どうして謝るんだよ……!」 「ゴメン、私……与木君は嫌いじゃない。だけど」 「だけど?」 「沖田君が死ぬのも、嫌だったから。だったら、代わりに」 「ふざけるなよ……どうして……!」 保美は、笑っていた。どんなに痛むのだろうか。どれだけ苦しいのだろうか。だけど、保美は笑っていた。 「いいの。私が選んだことだから……いいの」 沖田は、そこに立ったままだった。保美が邪魔をしなければ、恐らく死んでいたのに。 呆然としている沖田に、保美が声を掛けた。 「沖田君……」 「なんだ?」 「お願いが……あるの。いいかな?」 沖田は、黙っている。そして、そのまま近くを横切った。だが、もう沖田を殺してしまおうなんて考えは、浮かばなかっ た。もう、全てに対して無気力だった。 「……なんだ?」 「どうか……どうか、人を信じて。そして、心と心で……会話して」 「……それだけか?」 「……ありがとう。じゃあね……」 手の中で、保美は力を失った。その顔は苦しみの表情を浮かべていた。痛みに耐えていた、そんな感じだった。だけ ど、何処か満足気な顔でも、あった。 涙が、こぼれてくる。真っ赤に染まった両手を、この目で見つめる。 『この銃で、お前を守ってやるんだ』 『お前が……好きなんだ』 俺が、殺した。この手で、殺した。 俺が……俺が……。 「お前を生かしとくわけには、いかない」 頭に、硬いものが突きつけられた。 はっと気が付いて、振り向こうと思ったときには既に、悟の意識も吹っ飛んでいた。 ぱんっ、という単発の銃声。 アラバイダ9ミリ・サブマシンガンから吐き出されたたった1発の弾が、与木悟の命をもぎ取った。 「俺は……間違ってない。間違ってるのは、お前達だ」 男子34番 与木 悟 女子 3番 遠藤 保美 死亡 【残り32人 / 爆破対象者22人】 Prev / Next / Top |